spread spectrum clock(スペクトラム拡散クロック)

ビットエラー測定に関する翻訳に、spread spectrum clock(スペクトラム拡散クロック)という言葉が出てくる(例えば、Keysight J-BERT M8020A 高性能BERTのp4)。

近年のデジタル機器(PCや携帯電話など)の高速化、高密度化に伴い、機器のEMIノイズは増加し続けている。デジタル機器の動作にはクロック信号が必要であり、その基本波と高調波がノイズの主な原因である。理想的な方形波のクロックを、スペクトラム・アナライザなどで周波数領域で見ると(方形波をフーリエ変換すると)、クロック周波数(基本波周波数)、3×クロック周波数(3次高調波周波数)、5×クロック周波数(5次高調波周波数)、...の位置にスペクトラムのピークがあり、大きなノイズの原因となる。

CISPR(国際無線障害特別委員会)などのEMI規格に適合させるために、上記のようなクロック信号のピークを低減させる技術がスペクトラム拡散クロックである。これは、クロック周波数をわずかに変動させる(周波数変調を行なう)ことにより、周波数領域のピーク信号のエネルギーをその回りに分散(拡散)させてピーク振幅を低減する方法である。

身の回りのものでは、PCのBIOS設定で、スペクトラム拡散クロックのオン/オフができるものがあったが、最近では設定項目がなく常にオンになっている。

スペクトラム拡散クロックについては、以下を参照

周波数拡散クロックIC編

国立研究開発法人 情報通信研究機構のホームページ > 資料・データ > 出版物・発行書籍 > 情報通信研究機構研究報告 > EMC特集 > スペクトラム拡散クロックによる雑音測定への影響

ELINT

レーダー測定に関する翻訳で、ELINTという言葉がよく出てくる(例えば、発生頻度の低い信号の広帯域/高ダイナミック・レンジ測定による複雑なシステム/環境の特性評価のp3)。ELINTは、ELectronic INTelligence(電子諜報)の省略形である。

インテリジェンス機関(情報機関、諜報機関)の情報収集手法として、HUMINT(HUman INTelligence)、IMINT(IMagery INTelligence)、SIGINT(SIgnal INTelligence)がある。HUMINTはいわゆるスパイ活動による人からの情報収集、IMINTは偵察衛星や偵察機により得られた画像を解析することによる情報収集、SIGINTは電子通信信号の傍受と解析による情報収集である。

SIGINTは、COMINT(COMmunication INTelligence)とELINT(ELEctronic Intelligence)に分類される場合がある。COMINTは通信の傍受と暗号解読による情報収集である。ELINTは、ジャミング(電波妨害)、ECM(Electric Counter Measure、電子対抗手段)、ECCM(Electronic Counter-Counter Measure、対電子対抗手段)に活用するために、通信以外の電磁放射(レーダーや電子戦機器など)の周波数、パルス繰り返し数、変調方式などの情報を収集することである。

ELINT、COMINT、SIGINTについては、以下を参照。

軍事とIT > 3 > 第43回 情報活動とIT(3) ELINT・COMINT・SIGINT

Wi-SUN

無線通信測定に関する翻訳に、Wi-SUNという言葉がよく出てくる(例えば、標準信号発生器セレクションガイドのp7)。

Wi-SUNは、Wireless Smart Utility Networkの略で、日本のNICT(情報通信研究機構)が主導してIEEEで標準化された無線通信規格(IEEE 802.15.4g)の商品名である。「IEEE」は、「The Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc.(米国電気電子技術者学会)」の略称で、「802」は「802委員会(LAN/MANの標準化委員会)」の意味であり、「15」は「無線パーソナルエリアネットワークのワーキング・グループ」という意味である。Bluetooth規格は「IEEE 802.15.1」、ZigBee規格は「IEEE 802.15.4」をベースにしている。「IEEE 802.15.4」は、通信速度よりも小型、低価格、低消費電力が重視された規格である。

Wi-SUN(IEEE 802.15.4g)は、ZigBee規格(IEEE 802.15.4)を拡張したもので、無線通信機能(自動検針、課金、遮断機能)付きの電気、ガス、水道などのメーター(スマートメーターと呼ばれる)用に制定された規格である。また、人の介在なしで機器同士の通信を行なう「M2M」(Machine to Machine)や「IoT」(Internet of Things)によるビックデータの収集/活用のための通信手段として期待されている。

Wi-SUNは、ZigBeeに対して、変調方式の追加、周波数帯の拡張、ペイロード長の拡張が行われ、通信距離が長く(最大約100m 対 最大2~3km)、消費電力が1/10以下で乾電池数個で10年の動作が可能になっている。

Wi-SUNについては、以下を参照。

2年後にはスマホにもWi-SUN」―標準化を先導するNICTがWi-SUN普及に自信