charge pumping(チャージ・ポンピング)

半導体デバイス測定に関する翻訳で、charge pumping(チャージ・ポンピング)という言葉がよく出てくる(例えば、B1500A半導体デバイス・アナライザのp3)。

CPUやメモリなどのLSIには、MOS(Metal-Oxide-Semiconductor、金属酸化膜半導体)構造のトランジスタ(MOSFET、FETはField Effect Transistor(電界効果トランジスタ)の略)がスイッチング素子として使われている。MOSFETのゲートに電圧(電界)を印加する/しないによる、ソース-ドレイン間の電流のオン/オフ制御(スイッチ)を利用して、論理回路が形成されている。

nチャネル(n型)MOSFETは、p型半導体基板上にチャネル(電気の通り道)と呼ばれる領域を挟んで離れた2箇所にn型半導体領域(一方にソース電極、もう一方にドレイン電極が接続される)がある。チャネル領域の真上には酸化膜(絶縁層)を挟んで金属電極(ゲート電極)が存在する。

ゲートに電圧を印加していない状態では、ソース(n型半導体領域)とドレイン(n型半導体領域)間のチャネル領域はp型半導体なので(チャネル領域の電流の担い手であるキャリアはホールであり、ソースとドレインのキャリア(電子)と異なるので)、ソースからドレインに電流は流れない。

ゲートに正の電圧をかけると、ゲートが正に帯電して、ソースとドレインのキャリア(電子)がゲートに引き寄せられてp型半導体のチャネル領域に侵入し、ゲート直下のチャネル領域のp型半導体がn型半導体に反転してキャリアが同じ種類になり(反転層が形成され)、電流が流れる。

従来は、MOS製造プロセスで酸化膜(SiO2)と半導体(Si)基板の界面におけるダングリングボンド(化学の分野の相手のいない結合の手)は水素で終端され、ダングリングボンドのような構造欠陥による影響は問題にならなかったが、近年のLSI CMOSプロセスの微細化に伴い、ゲート酸化膜の厚さも極薄になり、影響が大きくなっている。界面におけるこのような構造欠陥(トラップ)により、キャリアが捕獲されてしまうエネルギー準位は界面準位と呼ばれている。キャリアが界面準位に捕獲され、その状態にとどまり、その後放出されるまでに時間がかかることになるので、MOSFETの高速動作に影響を与える。この界面準位密度を評価する方法の1つが、チャージ・ポンピング法である。

チャージ・ポンピング法では、ゲートにパルス列(パルスのベース電圧が蓄積状態に対応する電圧、パルスのトップ電圧が反転状態に対応する電圧)を印加して、蓄積状態と反転状態を繰り返して、ゲートと半導体(Si)基板との間の電流を測定する。ゲートに正の電圧(パルスのトップ電圧)が印加されている状態では、反転層が形成されて電子が流れ、トラップによって電子が捕獲される。その後、パルスがベース電圧に立ち下がる時に、捕獲された電子が放出されSi基板内の正孔と再結合して、ゲートとSi基板の間に電流(チャージ・ポンピング電流)が流れる。この電流とパルスの周波数から、界面準位密度を求める方法がチャージ・ポンピング法である。

MOSFETについては、以下を参照

山形大学大学院理工学研究科廣瀬文研究室 > 半導体デバイス教科書プロジェクト > 第6章 MOSFET

チャージ・ポンピング法については、以下を参照。

チャージポンピング法によるMOS界面準位密度の測定

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