DFD(差周波数歪み)

オーディオ測定の翻訳に、DFD(差周波数歪み)という言葉が出てくる(例えば、Keysight U8903Aオーディオ・アナライザのp4)。DFDは、Difference Frequency Distortionの略である。

非線形デバイス(入力と出力の関係が線形でない(比例しない)デバイス。理想的なアンプは出力が入力に比例する線形デバイス)に、周波数の近接した複数の正弦波を入力すると、相互変調歪みが生じる。この相互変調歪みを定量化する方法として、IEC 60268-3規格で定義されているものがDFD(差周波数歪み)である。

周波数が近接した(f1≒f2)、振幅がI(f1)、I(f2)の2つの正弦波を、非線形デバイスに入力すると、周波数nf1±mf2(n、m=0、1、2、…)に相互変調歪み成分、I(nf1±mf2)が生じる。このとき、周波数f2-f1に生じる相互変調歪み成分の振幅、I(f2-f1)を用いて、2次の差周波数歪みDFD-2は、

DFD-2=100×(I(f2-f1)/(I(f1)+I(f2))) %

で定義される。

3次の差周波数歪みDFD-3は、周波数2×f2-f1および2×f1-f2に生じる相互変調歪み成分の振幅、I(2×f2-f1)およびI(2×f1-f2)を用いて、

DFD-3=100×((I(2×f2-f1)+I(2×f1-f2))/(I(f1)+I(f2))) %

で定義される。

デバイスの非線形性は、相互変調歪みの他に、高調波歪みとしても現れる。高調波歪みは、入力信号周波数の整数倍の周波数に現れるので、デバイスを含む測定系に帯域制限がある(高い周波数の信号が減衰する)場合は過小に評価される。しかし、差周波数歪みの測定では、測定する周波数が入力信号周波数より小さいか、同程度なので、高調波歪みに比べて正確にデバイスの非線形性を評価できるという利点がある。

オーディオの歪み測定については、以下を参照。

Audio Distortion Measurements(英語pdf)

ARTA User Manual(英語pdf)のp44~p45

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