光ファイバ測定に関する翻訳に、chromatic dispersion(波長分散)という言葉がよく出てくる。
光ファイバは、屈折率が大きなコア部を、それより屈折率がやや小さなクラッド部で包み込んだ構造を持ち、コアとクラッドの境界面で全反射しながら光がコア内を伝搬する。光ファイバには、基本モードのみの光波が伝搬するシングルモード光ファイバと複数のモードの光波が伝搬するマルチモード光ファイバがある。
光ファイバにおける分散とは、光ファイバに入力されたパルス波形が、伝送路(光ファイバ内)を伝搬する間に、時間的にパルス波形の幅が広がる現象である。これにより、隣接パルスとの符号間干渉が生じ通信エラーの原因になる。
光ファイバの分散には、波長分散(光ファイバ内の光波の伝搬速度が波長に依存することに起因)、偏波モード分散(コアの真円からのずれ、応力による僅かな変形、不純物などにより、直交する2つの偏波モードで屈折率が異なること(複屈折)に起因)、マルチモード光ファイバのみに存在する多モード分散(伝搬するモードにより伝搬する距離が異なり、到達時間がずれることに起因)がある。
波長分散には、材料分散と構造分散がある。材料分散は、コアの材料(石英ガラス)の屈折率が波長に依存するために、波長毎に伝搬速度が異なり分散が生じること(基本モードで伝搬するシングルモード光ファイバ内の光波は厳密な単一波長ではなくわずかな拡がりを持っていて、材料分散の影響を受ける)である。構造分散は、導波路分散とも呼ばれ、光がコアとクラッドの境界面で全反射しながらコア内を伝搬する際に、波長の大きな光の方がクラッドへの染み出しが大きくなり、結果として伝搬経路が長くなり、分散が生じることである。
光ファイバの波長分散については、以下を参照。