半導体測定に関する翻訳に、doping profile(ドーピング・プロファイル)という言葉がよく出てくる(例えば、B1505Aパワーデバイス・アナライザ/カーブトレーサのp5)。
CPUやメモリなどのLSIには、MOS(Metal-Oxide-Semiconductor、金属酸化膜半導体)構造のトランジスタ(MOSFET、FETはField Effect Transistor(電界効果トランジスタ)の略)がスイッチング素子として使われている。MOSFETのゲートに電圧(電界)を印加するか、しないかによる、ソース-ドレイン間の電流のオン/オフ制御(スイッチ)を利用して、論理回路が形成されている。
LSIの製造では、単結晶のp型Si(シリコン)インゴットをスライスして研磨したウェーハ(p型基板)上に酸化膜を形成し、その上にフォトレジスト(感光材)を塗布し、LSIの回路パターンの原版であるフォトマスクを重ねた後、焼き付けてパターンを転写し、現像、エッチングしてマスクに覆われていなかった部分の酸化膜を除去する(リソグラフィーと呼ばれる)。その後、除去した部分にn型半導体であるソースとドレインを形成するために、不純物となるAs(ヒ素)やP(りん)などのイオンを注入する。この不純物を注入するプロセスがドーピングと呼ばれる。
イオン注入法による不純物ドーピングは、不純物原子をイオン化し、加速してウェーハに打ち込むので、ウェーハ表面の結晶構造が壊れて半導体としての電気的な性質が失われてしまう。この壊れた結晶構造を元に戻し、不純物原子を結晶の格子位置に正しく配置してキャリアを出せる状態(活性化状態)にするために熱処理(アニーリング)が行われる。このアニーリングにより、不純物が熱拡散して深い層まで達するので、ごく浅い層へのn型半導体の形成が困難になる。近年のLSIの大規模化、微細化により、このような不純物濃度の分布を測定することが重要になっている。ドーピング・プロファイルとは、ウェーハ表面から深さ方向への不純物濃度の分布のことである。ドーピング・プロファイルは、拡がり抵抗法(例えば、これ)やC-V測定法(例えば、これ)などの電気的な測定から得ることができる。
CMOS LSIの製造プロセスについては、以下を参照