電磁界シミュレーションに関する翻訳に、skin effect(表皮効果)という言葉がよく出てくる(例えば、Agilent EEsof EDA E8921A/AN Momentumのp6)。
導線に直流電流が流れている場合は、電流は導線の断面に一様に分布して流れる。しかし、導線に交流電流が流れる場合は、交流の周波数の増加とともに、導線の断面の外側(導線の表面)に電流が集中し(電流密度が高くなり)、導線の中心に向かうに従って電流が流れ難く(電流密度が低く)なる。この現象を表皮効果と言う。表皮効果は以下のように定性的に説明できる。
導線に直流電流を流すと、アンペールの右ねじの法則により、電流の流れる向きの同心円上に静磁界ができる。この磁界は導線の内部にも生じている。導線に交流電流を流すと、同様に、導線の内部に時間的に変化する磁界が生じる。この時間的に変化する磁界は、ファラデーの電磁誘導法則により、その磁界の回りに渦電流を生じさせる(Skin effectの図を参照)。この渦電流の向きは、導線の(断面の)中心では元の交流電流と逆向きになり元の交流電流をキャンセルし、導線の表面(導体の断面の外側)では元の交流電流と同じ向きになり元の交流電流を強める。結果として、導線の表面に電流が集中して流れる。
表皮効果の詳細については、以下を参照
伊藤 洋のページ > 講義ノート > 電気学の7.発電(ファラデーの法則と発電機)の「渦電流と表皮効果」の項