burst signal(バースト信号)

オシロスコープ測定に関する翻訳で、burst signal(バースト信号)という言葉がよく出てくる(例えば、InfiniiVision Xシリーズ 教育用オシロスコープ・トレーニング・キットのp4)。

burst(バースト)は、辞書を引くと「爆発する」とか「張り裂ける」という訳があるが、オシロスコープで信号を時間領域で表示したときに、時間領域のごく一部にのみ、信号(正弦波、方形波、三角波など)が存在し、それ以外の領域には信号が存在しないものをバースト信号と呼ぶ。また、信号が存在する領域と信号が存在しない領域が時間領域で繰り返される信号もバースト信号と呼ばれる(例えば、ここの「バースト波形の出力」の図)。すなわち、このような波形は、時間領域の一部にのみ信号のエネルギーが集中している(爆発している)ので、バースト波形(信号)と呼ばれる。

NISPOM

測定器でのセキュア(安全)なデータ消去に関する翻訳で、NISPOMという言葉がよく出てくる(例えば、IntegraVision PA2200シリーズ パワー・アナライザのp7)。NISPOMは、National Industrial Security Program Operating Manual(国家産業保全プログラム運用マニュアル)の略で、アメリカ国防総省と契約関係にある企業に対する機密情報の保全に関する規則が定められている。

HDDなどの記録媒体からデータのセキュアな消去(完全消去)を行うための規格として、NISPOM方式というものがある。この方式では、データ領域を、最初に固定値”0x00″で上書きし、次に”0x00″の補数である”0xFF”で上書きし、最後に乱数で上書きするという、合計3回の上書き操作が行われる。

最も強力なデータ消去方式として、35回の上書きを行うGUTMANN方式というものもあるが、これらの強力なデータ消去方式は1990年代の記録密度が低く、残留磁気が残りやすいHDDが使用されていた時期のもので、NIST(National Institute of Standards and Technology、アメリカ国立標準技術研究所)のSpecial Publication 800-88 (Guidelines for Media Sanitization)では、2001 年以降に製造された15GBを超えるHDDでは1回の上書きによる消去で十分としている。

セキュアなデータ消去については、以下を参照。

デジタル・フォレンジック研究会のホームページ > 研究会活動 > 書籍 > 「証拠保全先媒体のデータ抹消に関する報告書」 > データ抹消に関する米国文書(規格)及びHDD、SSD の技術解説(沼田 理)データ消去に関する海外規格の動向(瀧澤 和子)

A4WP

ワイヤレス給電の測定に関する翻訳に、A4WPという言葉が出てくる(例えば、オシロスコープによるA4WP(Alliance for Wireless Power)測定(パート1))。

電気製品を動かすためには、電力を供給する必要がある。通常、AC100Vのコンセントに電源ケーブル(電気を通すワイヤ)をつないで外部電源から電力を供給する(充電池を使用する場合も充電のために、外部電源にケーブルをつないで電力を供給する必要がある)。これに対して、ケーブル(ワイヤ)を使用しないで非接触で電力を伝送することをワイヤレス給電と呼ぶ(非接触給電、非接触電力伝送、ワイヤレス電力伝送とも呼ばれる)。1995年にソニーのICカードのFeliCaで実用化され、2000年以降、コードレス電話の子機、シェーバー、電動歯ブラシの充電用などで実用化されてきた。ワイヤレス給電には、給電のためにワイヤをつなぐための電極の露出がないので水などによる腐食が起こり難い、製品を密閉状態にできるので故障が起こり難いといった利点があり、製品開発の自由度や安全性が向上する。

ワイヤレス給電方式は、放射型(電磁波の遠方界(エネルギーが伝搬する領域)を利用する方式)と非放射型(電磁波の近傍界(エネルギーが蓄積される領域)を利用する方式)に大きく分けられる。放射型には、マイクロ波を使用して大規模宇宙太陽光発電所から地上に電力を伝送する構想がある。非放射型は、磁界結合方式(変圧器などで、1次(送電)側のコイルと2次(受電)側のコイルがつながっていなくても、電磁誘導により交流が流れることを利用)と電界結合方式(送電側と受電側がコンデンサ(絶縁層を挟んだ電極)で隔てれれていても交流が流れることを利用)に大きく分けられる。磁界結合方式は、電磁誘導型(通常の変圧器(密結合トランス)と同じ原理を利用したもので、送電側のコイルと受電側のコイルを接触するくらいに近づける必要がある)と磁界共振型(液晶ディスプレイのバックライトとしてLEDが普及する前に使用されていた冷陰極管を点灯させるために用いられる調相結合トランス(磁気漏れトランス、疎結合トランス、高周波共振変圧器とも呼ばれる)の原理と言われている。例えば、ここを参照)に分けられる。

電磁誘導型には、世界で200社以上が加盟しているWPC(Wireless Power Consortium)が推進しているQiという規格(日本で最も普及している)とIEEEやスターバックス、googleが加盟していることが特徴のPMA(Power Matters Alliance)が推進しているPowermatという規格がある。磁界共振型には、サムスンとクアルコムを中心に誕生したA4WP(Alliance for Wireless Power)が推進するRezenceという規格があった。PMAとA4WPは、2015年に統合され、AirFuel Allianceという団体になり、AirFuel Inductive(電磁誘導型)とAirFuel Resonant(磁界共振型)の2つの規格を推進している。

ワイヤレス給電については、以下を参照。

ワイヤレス給電の最新事情

ニコラテスラって素晴らしい > ワイヤレス電力伝送の原理説明