derating(ディレーティング)

測定器の仕様の翻訳で、derating(ディレーティング)という言葉がよく出てくる(例えば、IInfiniiVisionオシロスコーププローブ/アクセサリのp7)。

derating(ディレーティング)とは、 読んで字の如く、de(下げる)+rating(定格)で、電子部品/デバイスの分野では、最大定格よりも低い値で使用して、その部品/デバイスの信頼性を向上させること(故障率を低くすること)という意味である。ディレーティング仕様は、上のpdfファイルのようにディレーティング曲線として表されたり、オシロスコープのプローブの最大許容電圧の仕様に、

周波数ディレーティング:400 Vpk(40 kHzまで)。6 Vpkまで20 dB/decadeでディレーティング

のように記載されている。

電子部品/デバイスは、印加する電圧、電流、電力、周波数や接続する負荷による電気的なストレス、温度や湿度などの環境的なストレスの累積によって故障が生じる。したがって、これらのストレス項目の最大定格値を下回る値で使用すれば一般的には故障率は下がる。しかし、電子部品/デバイスによっては、ディレーティングを行っても故障率がそれほど変わらなかったり、極端なディレーティングを行なうと逆に故障率が上昇するストレス項目もある。

ディレーティングについては、以下を参照。

ディレーティング(derating)

memory depth(メモリ長)

オシロスコープ測定の翻訳で、memory depth(メモリ長)という言葉がよく出てくる(例えば、InfiniiVision 1000 Xシリーズ オシロスコープのp17)。

デジタル・オシロスコープの波形表示プロセスでは、アナログ波形を高速なA/Dコンバーターで、一定の時間間隔毎にサンプリング(デジタイズ)して、(ディスプレイに表示するためのデジタル処理に時間がかかるので)一時的に高速な波形メモリに記録しておく。

メモリ長(レコード長とも呼ばれる)とは、この高速波形メモリに記録できる波形のポイント数(サンプル数)のことである。連続して記録できる波形の時間長は、サンプリング間隔(1/サンプリング・レート)とメモリ長の積なので、例えば、最高サンプリング・レートが1Gサンプル/秒、メモリ長が10Kポイントのオシロスコープの場合は、波形を10μsの時間だけ連続してディスプレイに表示できる。このようなメモリ長の小さいオシロスコープでは、時間軸の設定を遅くすると、ディスプレイ全体に波形が表示されなくなるので、時間軸の設定が遅い場合は、サンプリング・レートを自動的に低く設定して、波形をディスプレイ全体に表示するようになっている。しかし、サンプリング・レートが低くなるとエリアシング誤差が発生しやすくなる。

逆に、大容量メモリを搭載したオシロスコープでは、時間軸設定を遅くしても最高サンプリング・レートでディスプレイに表示できるので、エリアシング誤差が発生せず、長い時間範囲にわたって波形を詳細に観測できる。

オシロスコープのメモリ長については、以下を参照。

組み込みエンジニア必須のスキル – オシロの基本を身に着ける > 第5回 観測する波形からオシロスコープを選ぼう – その1

direct digital synthesis(ダイレクト・デジタル・シンセシス)

波形発生器に関する翻訳に、direct digital synthesis(ダイレクト・デジタル・シンセシス)という言葉がよく出てくる(例えば、33500Bシリーズ波形発生器)。direct digital synthesis(ダイレクト・デジタル・シンセシス)は、略してDDSと呼ばれる。

DDSは、基準クロックから、直接デジタル的に、周波数が可変の任意の波形を発生させる方式である。PLLと1/n分周器を用いた間接的な発生方式に対するものとして、ダイレクト・デジタル・シンセシスと呼ばれる。

DDSは、加算器とラッチ(レジスタ)を組み合わせた累積加算器(積算器、アキュムレータ)、1サイクルの波形データが記録されているROM、デジタル信号をアナログ信号に変換するD/Aコンバーターから構成されている。

正弦波を出力するDDSでは、ROMには、先頭アドレスから最終アドレスまでのアドレスビット幅に、正弦波の位相ゼロに対応する振幅値から正弦波の位相2πに対応する振幅値が書き込まれている。アキュムレータは、基準クロックに同期して積算設定ステップで積算していく(積算設定ステップが1の場合は積算値は0、1、2、・・・、積算設定ステップが2の場合は積算値は0、2、4、・・・などとなる)。この積算値がROMのアドレスになり、このROMのアドレスの振幅値がD/Aコンバーターに送られ、アナログ出力となる。これは、積算設定ステップをn、ROMのアドレスビット幅をmビット、基準クロックの周波数をf_referenceとすると、DDSのアナログ出力の周波数f_outが、

f_out=(n/2^m)×f_reference

となることを表している。nを変化させると、瞬時に出力周波数が変化し、位相連続な波形を容易に発生できる。また、ROMに正弦波以外の任意の波形を1サイクル分書き込んでおけば、任意の周波数の任意の波形を発生でき、PLLと1/n分周器を用いた方式に比べて、回路が簡単で安価である。

ダイレクト・デジタル・シンセシスについては以下を参照。

DDS について

高品質の波形を簡単、効率的かつ柔軟に生成するDDSデバイス