LoRa

無線通信機器設計に関する翻訳に、LoRaという言葉が最近よく出てくる(例えば、IoT-大きな可能性と大きな課題のp3の図1)。

IoT向けの無線規格として、近距離ネットワーク用のBluetooth Low Energy (BLE)ZigBeeWi-SUN、中距離ネットワーク用の802.11ahなどがある。NB-IoT、SIGFOXとともに、LPWA(Low Power Wide Area)と呼ばれるIoT向けの長距離ネットワーク用の規格として注目されているのが、LoRaWANという規格である。

LoRaは、Long Rangeの略で、長距離通信を低消費電力で行なうためにSemtech社(元はフランスのCycleo社が開発し、Semtech社が買収)が開発したIoT/M2M向けの変調方式(LoRa変調)で、CSS(Chirp Spread Spectrum、チャープスペクトラム拡散)変調に基いたものである。

CSS変調は、搬送波の振幅が一定でその周波数を変化させることにより、デジタル情報(0、1のビット列)を伝送するものであるが、FSK(周波数シフトキーイング)のように、デジタル情報が0のときに低い周波数、1のときに高い周波数を対応させて伝送するのではなく、デジタル情報が0のときに周波数をリニアに減少させ(ダウンチャープと呼ばれる)、1のときに周波数をリニアに増加させて(アップチャープと呼ばれる)伝送する変調方式である(例えばこれのp10~p11)。

スペクトラム拡散では、拡散率(処理利得)を上げると(受信時の逆拡散処理により、信号対(雑音+干渉)の電力比が拡散率の分だけ改善され)、リンクバジェット(受信感度)が増加し、雑音や干渉信号に対する耐性が上がり、到達距離が長くなる。拡散率を上げるということは、拡散信号速度に対してベースバンド信号速度を遅くすることに対応するので、その分データ転送速度は遅くなる。したがって、スペクトラム拡散は、IoT向けの長距離ネットワーク通信に適した変調方式である。

LoRaWANについては、以下を参照。

株式会社ソラコムのblog > アーカイブ > LoRaWANの仕様とネットワークアーキテクチャー

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