高周波回路測定に関する翻訳で、LTCCという言葉がよく出てくる(例えば、Agilentインピーダンス/ネットワーク解析Application Listのp26)。LTCCは、Low Temperature Co-fired Ceramicsの略で、低温同時焼成セラミックスと訳される。
高周波回路を搭載する基板として、ガラスエポキシ基板、テフロン基板、セラミック基板などがある。ガラスエポキシ基板は、PCのマザーボードやモバイル機器などの民生用に広く使用されていて安価である。テフロン基板は、高周波特性が良好(高周波損失が小さい)だが高価であり、近年、ガラスエポキシ基板でも必要な性能が得られるようになってきたので、民生用にはあまり使われていない。セラミック基板は、高周波損失が小さく、酸化アルミニウム(アルミナ)が原料なので熱伝導率が高い(放熱特性に優れている)が、非常に高価であり、スーパーコンピュータや航空宇宙などの分野での利用に限られている。
LTCC(低温同時焼成セラミックス)基板の「低温」とは、タングステンを導体成分としたセラミック基板(アルミナが主成分)の焼成温度(約1600度)よりも、焼成温度が低い(約900度)ことから、そう呼ばれている。「同時焼結」とは、「導体部分」と「セラミック部分」を同時に焼結して高密度配線、積層化を容易に実現できるという意味である。LTCCでは、焼成温度の低いセラミックの開発により、タングステンより導体損失が小さく融点の低い銀や銅を導体成分として用いて同時焼成できるようになった。LTCCは、当初、銅を導体とすることによる信号の高速伝搬特性を活用してスーパーコンピュータのマザーボード用として実用化されたが、現在では、高密度配線、積層化を容易に実現できることから、小型化の要求の強い携帯電話などのモバイル機器に広く用いられている。
LTCCについては、以下を参照。
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