IoT、M2M

無線通信測定に関する翻訳に、IoT、M2Mという言葉がよく出てくる(例えば、近距離通信用Signal Studio N7610Bのp2)。IoTはInternet of Thingsの略で、M2MはMachine to Machineの略である。

ここ数年、IoT(モノのインターネット)という言葉が流行っている。人と人との通信(コミュニケーション)に対して、モノとモノ(Machine to Machine)の通信を強調して、IoTとM2Mが同義で使われる場合もあるし、人とモノを含むあらゆる存在(Things)が常につながっていてるという意味で使われ、M2Mも含めたもっと大きな概念として使われる場合もある。

M2Mは、人間の介在なしで機械と機械がネットワークでつながり相互に通信して情報を収集したり動作を制御するシステムで、自動販売機、エレベータ、無人駐車場の遠隔監視などで、かなり前から存在する。M2Mは特定の目的/用途のためのシステムで、そのネットワークはオープンなインターネットである必要はなく(閉じたネットワークで運用されていることが多く)、システム構築に多額の費用がかかった。

一方、IoTは、特定の目的のために特定の機械をつなぐM2Mとは異なり、センサーを搭載したすべてのモノがインターネットでつながるので、そのモノの数が桁違いに多い。メトカーフの法則は「ネットワークの価値は、それに接続されている端末の数の2乗に比例する」と言っているが、IoTの本質は、潜在的に膨大な価値が存在するネットワーク上の広範囲の属性の膨大な数のセンサーからの膨大なデータ(ビッグデータ)から、統計的な分析や機械学習などのAI手法を利用して、小さな変化を見つけ出し、その変化から将来を予測し、それに対処する(新しい価値を生み出す)ことであると言われている。これの究極の姿がSF映画「ターミネータ」の世界であり、AIの知性が人間の知性を超えるシンギュラリティ(技術的特異点)あるいは2045年問題として注目されている。

IoT、M2Mについては、以下を参照。

コレ1枚で分かる「M2MとIoTの違い」

第31回 「ポケモンGO」まで来たITの進化とその先にあるIoTの衝撃

Skip Ordered Set(スキップ・オーダード・セット)

高速シリアル・データ通信測定に関する翻訳に、Skip Ordered Set(スキップ・オーダード・セット)という言葉がよく出てくる(例えば、Keysight J-BERT M8020A 高性能BERTのp24)。

PCI ExpressやUSB 3.0などの高速シリアルデータ通信では、送信側と受信側を同期するために、エンベデッド・クロック(クロックをデータに埋め込んで伝送する方式)が用いられていて、受信側でクロック・リカバリを行ってデシリアライズするので、デシリアライズ段階では送信側と受信側のクロック周波数の差に起因する、データの欠損や重複が生じることはない。しかし、それ以降のロジック段階(8b/10bデコードや128b/130bデコード段階)で、異なるクロック源を使用している場合は、クロック周波数の差による影響が生じる。

このようなクロック周波数の差によるデータの欠損や重複が生じるのを防ぐために、送信側ではスキップ・オーダード・セットと呼ばれるダミー文字列を定期的に挿入している。受信側では、デシリアライズ段階とデコード段階の間に受信したデータを一時的に格納するエラスティック(弾性)バッファを設けて、送信側のデータレートが遅い場合はスキップ・オーダード・セットを削除し、送信側のデータレートが速い場合はスキップ・オーダード・セットを挿入することにより、クロック周波数の差を吸収して、データの欠損や重複が生じないようにしている。

スキップ・オーダード・セットについては、以下を参照。

【連載】高速シリアル・インタフェース測定の必須スキルを身に着ける第6回シリアル・インタフェースの物理層を形成する3大要素 – レシーバの「エラスティック・バッファ(弾性バッファ)」