高速シリアル・データ通信測定に関する翻訳に、clock recovery(クロック・リカバリ)という言葉がよく出てくる(例えば、Agilent 83495A 10Gb/sクロック・リカバリ・モジュール)。clock recoveryは、クロック再生、クロック抽出、クロック回復と訳されることもある。
今日の多くの高速シリアル・データ通信(シリアルATA、PCI Express、USB 3.0、1000BASE-T、HDMIなど)では、送信側と受信側を同期するために、エンベデッド・クロック(クロックをデータに埋め込んで伝送する方式)が用いられ、専用のクロック線が用いられていない。
受信側では、受信したデータ列の「0」と「1」を正しいタイミングで判定するために、受信側のクロックを送信側のクロックに同期し、そのクロックで受信したデータ列をサンプリングしてデータを回復する必要がある。このために、送信されてきた(エンベデッド・クロック方式の)データ列からクロックを回復(リカバリ)することをクロック・リカバリという。
高速シリアル・データ通信では、長時間「0」または「1」のみのデータが続くと、直流成分が含まれることになり、AC結合のデータ線で電圧レベルが減衰し、遷移ポイント付近で「0」か「1」かの判定が困難になる。このために、8b10bなどのコード化を行って、長時間連続して「0」または「1」が発生しないようにしている。また、このようにすることにより、送信されてきたデータ列の「0」から「1」や「1」から「0」への遷移ポイントを検出し、受信側の基準クロックを遷移ポイントに(PLLを用いて)同期して、クロックを回復することができる。
高速シリアル通信については、以下を参照
設計の基本は仕様の理解 ― 高速シリアル通信を実現するために知っておくべき最低限の知識
クロック・リカバリの詳細については、以下を参照。
CLOCK AND DATA RECOVERY CIRCUITS(英語pdf)
Clock and Data Recovery for Serial Digital Communication(英語pdf)