SIGFOX

IoTデバイスの測定に関する翻訳に、Z-Waveという言葉が最近よく出てくる(例えば、IoT:デザイン/テストに必要なテクノロジーとソリューションのp4の図1)。

IoT向けの無線通信規格として、近距離ネットワーク用のBluetooth Low Energy (BLE)ZigBeeWi-SUNZ-Wave、中距離ネットワーク用の802.11ah、長距離ネットワーク用のNB-IoTLoRaWANなどがある。SIGFOXは、LoRaWANとともに低消費電力で広い範囲をカバーするLPWA(Low Power Wide Area)と呼ばれるIoT向けの長距離ネットワーク用の規格である。

SIGFOXは、2009年にフランスのSIGFOX社が開発した規格で、この規格の推進手段として、1つの国で1つの事業者と契約してその国のネットワークを構築するという戦略をとっている。日本では、京セラコミュニケーションシステムがライセンスを受けている。SIGFOXは、欧州を中心に普及していて、火災報知器などのホームセキュリティ、気象観測、スマートパーキング、水道メーター検針、家畜/ペットモニタリングなどに利用されている。

LoRaWANがLoRaと呼ばれるスペクトラム拡散方式を用いて雑音や干渉信号に対する耐性を上げ、到達距離を長くしている(その分、通信速度は遅くなる)のに対して、SIGFOXは、ウルトラナローバンド(チャネル帯域幅が100Hzと非常に狭いので受信感度を高くでき、雑音、妨害波に強い)、時間/周波数ダイバーシティ(1つのデータを送信するのに、異なる周波数で3回連続して送信することにより、雑音、妨害波による送信の失敗確率が減少)、空間ダイバーシティ(受信可能なすべての基地局で受信することにより、空間内のある方向にのみ存在する妨害波の影響を軽減)を組み合わせて、雑音や干渉信号に対する耐性を上げ、到達距離を長くしている。その分、通信速度は100bpsと非常に遅く、1回当たりのデータのアップロード量が12バイトと小さいが、センサー出力の数値のみを送信するIoT向けには十分であり、ネットワークもそれほど複雑ではないので、回線使用料が100円/年程度と安価になる見込みである。

SIGFOXについては、以下を参照。

いまさら聞けないSIGFOXネットワーク入門

「SIGFOXがIoTの常識を変える」、KCCS黒瀬社長が基調講演

pink noise(ピンクノイズ)

オーディオ測定に関する翻訳で、pink noise(ピンクノイズ)という言葉がよく出てくる(例えば、M9260A PXIeオーディオアナライザ・モジュールのp3)。

熱雑音などに代表されるホワイトノイズ(白色雑音)とは、パワースペクトラムが周波数に依存しない(単位帯域幅当たりのノイズパワーが一定の)ノイズであり、周波数を横軸に、パワーを縦軸にしてプロットすると、ある程度の幅のあるフラットなスペクトラム(例えば、このページの図)を示す。ピンクノイズとは、パワースペクトラムが周波数に反比例する(単位帯域幅当たりのノイズパワーが周波数の逆数に比例する)ノイズで、1/fノイズとも呼ばれる。ピンクノイズは、ホワイトノイズを-3dB/octaveのローパスフィルターに通すことにより得られる。ホワイトという名称は、可視光の範囲のすべての波長(周波数)の光を同じ割合で混ぜると白色になるというアナロジーから来ている。同様にピンクという名称は、可視光の範囲の光を、周波数fに対して強さが1/fとなるような割合(周波数の低い赤色の光が多くなるような割合)で混ぜるとピンクになるというアナロジーから来ている。

オーディオ測定では、ピンクノイズは特に人間の聴感に合わせた周波数特性を調べるために使用される。耳で感じる周波数の違いは対数的(500Hz、1kHz、2kHz、4kHz、…のように周波数が2倍になるごと(1オクターブ高くなるごと)に、音が等間隔で高くなっているように感じる)なので、音の強さを測定する際に、それぞれの周波数ポイント(500Hz、1kHz、2kHz、4kHz、…)を中心にして、2倍ずつ広く分割した測定帯域幅(オクターブバンドと呼ばれる)で測定する。したがって、このような測定では、(単位帯域幅当たりのノイズパワーが一定の)ホワイトノイズを使用すると、高音(周波数が高いポイントの測定帯域幅)でノイズパワーが大きな数値になる(ノイズパワー=単位帯域幅当たりのノイズパワー×測定帯域幅なので)が、(単位帯域幅当たりのノイズパワーが周波数の逆数に比例する)ピンクノイズを使用すると、オクターブバンドごとに一定の大きさ(フラット)になり、人間の感覚と一致する数値になる。

ピンクノイズについては、以下を参照

株式会社ソフトウェアクレイドルのホームページ > 技術コラム > 装置設計者のための騒音の基礎 第1回 > オクターブバンド分析

Z-Wave

IoTデバイスの測定に関する翻訳に、Z-Waveという言葉が最近よく出てくる(例えば、IoT対応民生用エレクトロニクスデバイスのp11)。

IoT向けの無線通信規格として、近距離ネットワーク用のBluetooth Low Energy (BLE)ZigBeeWi-SUN、中距離ネットワーク用の802.11ah、長距離ネットワーク用のNB-IoT、SIGFOX、LoRaWANなどがある。Z-Waveは、IoT向けの近距離ネットワーク用の規格で、特にスマートホームのネットワーク用として普及が進んでいる。Z-Waveは、無線による照明制御から発展したもので、デンマークのZen-sys社が2003年に開発した規格(2009年に米国のSigma Designs社がZen-sys社を買収)である。Z-Waveアライアンスを設立して、規格の普及、開発を推進している。

Z-Waveの特長は、900MHz帯のISMバンドを使用していることで、これにより、家庭で一般的に使用されている2.4GHz帯のISMバンド(無線LANや電子レンジ)との干渉がなく、障害物があっても回折により電波が回りこみやすく、通信距離が長くなる。また、デバイスが1社による独占供給なので、完全互換性が得られるという利点はあるが、スマートホーム市場でさらに普及するための問題点になる可能性もある。

Z-Waveは、欧米では普及しているが、日本では、900MHz帯の電波利用の再編の影響(2012年に免許不要の920MHz帯が使用可能になる)や法規制(2013年5月10に、無線通信による電源オン操作が可能になる)のために、普及が遅れている。

Z-Waveについては、以下を参照。

IoT時代の無線規格を知る【Z-Wave編】