UWB

広帯域通信信号測定に関する翻訳で、UWBという言葉がよく出てくる(例えば、Agilent Infiniium オシロスコープと89601A ベクトル信号解析ソフトウェアのp1)。UWBは、Ultra WideBandの略で、 超広帯域無線通信と訳されることがある。

UWBは、もともと米国の軍事用レーダー技術として開発されてきたが、2002年に米連邦通信委員会(FCC)が民生利用を許可した。FCCの定義では、帯域幅が500MHz以上または比帯域幅(10dB帯域幅/中心周波数)が20%以上ものがUWBとされる。

UWBは、狭義ではインパルス無線方式であり、搬送波を用いないで、パルス幅が短く(1ns以下)ピーク出力の大きなスパイク状の波形(インパルス)をパルス列としてそのまま送受信して情報を伝送する。フーリエ変換の性質から、時間領域で短くて鋭いインパルスは、周波数領域では、ノイズ様の振幅が非常に小さく広がったスペクトラムになるので、他の通信システムとの干渉が少なく、通信の秘話性が高まるという利点がある。さらに、搬送波を用いないので、回路を簡素化できるという利点がある。しかし、インパルス無線方式では、高速なデータ伝送を行なうには、時間軸上で高速なDSPを使用して高速にデータを処理する必要があり、実用的な観点から、UWBの標準化作業の初期段階で排除された。

広義のUWBには、直接拡散によるスペクトラム拡散方式と周波数ホッピングを利用したマルチバンド(MB)-OFDM(直交周波数分割多重化)方式がある。これらの2つの方式が、UWB標準化委員会で争われたが、2006年に標準化活動の断念と解散が採択され、それぞれ独自に実用化が進められてきた。しかし、現在では、無線LANなどの他の通信システムのデータ伝送速度が高速化し、UWBの優位性がなくなってきていて、高速通信に関連する開発は停滞している。

一方、パルス幅が短く高解像度が得られるので、自動車用の近距離レーダーとしてUWBレーダーの開発が活発化している。

UWBについては、以下を参照。

電子情報通信学会誌のホームページ > 話題の記事 > 2004年5月号 > 「超広帯域(UWB)無線通信と今後の高度無線アクセス技術」

UWB無線システムの動向について

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