Fibre Channel(ファイバ・チャネル)

高速シリアル・バス測定に関する翻訳に、Fibre Channel(ファイバ・チャネル)という言葉がよく出てくる(例えば、Infiniium 90000 Xシリーズ オシロスコープのp2)。Fibre Channel(ファイバ・チャネル)は、FCと略記されることがある。Fibre Channelは、当初、光ファイバ・ケーブルのみをサポートしていたので、Fiber Channelと呼ばれていたが、銅線もサポートされるようになったので、Fibre Channelという呼称に改められた。

ファイバ・チャネルは1988年から開発が開始され、ANSI(American National Standards Institute、米国規格協会)で1994年に規格が承認された高速シリアル・インタフェースの規格である。コンピュータとストレージ間の接続に当時一般的だったSCSIインタフェースのケーブル長の制限やパラレル・ケーブルによる取り回しの悪さを克服するために開発された。

ファイバ・チャネルによる接続には、銅線の同軸ケーブルまたは光ファイバ・ケーブルを使用でき、同軸ケーブルで最長75m、光ファイバ・ケーブルで最長10kmの伝送が可能である。2012年に32GFCと呼ばれる規格の策定が完了し、伝送速度(スループット)は6.4Gbpsに達している。ファイバ・チャネルのプロトコルは、FC-0 ~ FC-4の5階層で構成され、最上位層のFC-4でTCP/IP、SCSIなどのプロトコルがサポートされている。

現在では、大規模データセンタなどのサーバ-ストレージ間やストレージ間のSAN(ストレージ・エリア・ネットワーク)に使用され、ビッグデータ分析、クラウド・ストレージ・ネットワークなどの普及に伴い、ファイバ・チャネル市場の拡大が続いている。

ファイバ・チャネルについては、以下を参照。

ジャパンデータストレージフォーラムのホームページ > ストレージ・ネットワーキング技術部会 > ファイバチャンネル情報 > FCIA関連 > ファイバーチャネル ソリューション・ガイド 2012-2013(日本語翻訳)

I2C、SPI

シリアル・バス測定に関する翻訳に、I2C、SPIという言葉がよく出てくる(例えば、InfiniiVision 3000 X シリーズ新・定番オシロスコープ用シリアル・バス・アプリケーション)。

I2Cは、Inter-Integrated Circuitの略で、Philips社が低コストでシンプルなIC(デバイス)間の制御(通信)を実現するために開発したシリアル・バス規格である。

SPIは、Serial Peripheral Interfaceの略であり、Motorola社が提唱したシリアル・バス規格で、I2Cと同様に低コストでシンプルなIC間の制御(通信)を実現する。

I2Cは、SCL(シリアル・クロック)とSDA(シリアル・データ)の2本の信号ラインで構成され、通信速度は100kbps(標準モード)または400kbps(ファースト・モード)である。SPIは、MOSI(マスタ・データ出力/スレーブ・データ入力)およびMISO(マスタ・データ入力/スレーブ・データ出力)の2本のデータ・ラインと、CLK(クロック)およびSS(スレーブ・セレクト)の2本の制御ラインで構成で構成され、通信速度は数十Mbpsである。また、I2Cは、デバイスにアドレスを割り当てて個々のデバイスを識別しているのに対して、SPIではスレーブ・セレクト信号でデバイスを選択して通信を行う。以上から、多数のデバイスを低速で接続する場合はI2Cが用いられ、少数のデバイスをより高速で接続する必要が場合はSPIが用いられることが多い。

I2CもSPIも、パラレル・バスに比べて配線数を大幅に削減でき汎用性が高いため、民生用、産業用の多くの機器で、ICやデバイス間の通信が低速でもよい内部接続バスとして広く使用されている。

I2C、SPIについては、以下を参照。

ミックスド・シグナル・オシロスコープによるシリアル・バス・システムデバッグの4ページ「I2C(Inter-Integrated Circuit)の概要」、9ページ「SPI(Serial Peripheral Interface)の概要」

phase-coherent(位相コヒーレント)

アンテナ・アレイやMIMO測定に関する翻訳で、phase-coherent(位相コヒーレント)という言葉がよく出てくる(例えば、M9703A AXIe高速デジタイザ/広帯域デジタル・レシーバのp2)。

coherentという用語は、一般に、「可干渉性の」や「 理路整然とした」と訳されるが、計測関係では、phase-coherent(位相コヒーレント)は「位相が揃った波形」という意味である。位相が揃った(それぞれの波の山と山、谷と谷の時間的、空間的な位置関係が一定の)複数の波が重なり合うと、山と山の部分は強め合い、山と谷の部分は打ち消し合い、干渉する(例えば、このようなきれいな干渉縞ができる)。位相がランダムな(それぞれの波の山と山、谷と谷の位置関係がランダムな)複数の波の場合(incoherent(インコヒーレント)と呼ばれる)は、干渉しない。

波の干渉性を利用して、アンテナ・アレイ(複数のアンテナ素子を整然と配列したもの)の指向性を調整できる。すなわち、各素子への給電振幅と給電位相を変化させることにより、アンテナ・アレイ全体としての指向性をある角度で最大になるようにできる(上の水面波干渉実験では、波源の数を増やし、それぞれの波源に位相差をつけることにより、波が強め合う方向を任意の角度にできる)。このようなアンテナ・アレイは、アンテナ自体を機械的に回転させなくても、給電振幅と給電位相を電気的に制御するだけで高速に任意の方向にレーダ波を照射したり、任意の方向から来たレーダ波を受信できるフェーズド・アレイ・レーダにも使用されている。

このようなアンテナ・アレイの評価に位相コヒーレントな信号が必要になる。

アンテナ・アレイについては、以下を参照。

アレーアンテナの基礎

higher-order modulation(高次変調)

無線通信測定に関する翻訳で、higher-order modulation(高次変調)という言葉がよく出てくる(例えば、ソリューション:無線LAN 802.11ac製造テストのp2)。高次変調という用語は、デジタル変調に関連して使用される。

基本的なデジタル変調には、BASK(Binary Amplitude Shift Keyimg)、BFSK(Binary Frequency Shift Keyimg)、BPSK(Binary Phase Shift Keyimg)がある。それぞれ、デジタル信号の0と1に対応して、搬送波の振幅(A1とA2)、周波数(f1とf2)、位相(φ1とφ2)の2つの値(Binary)をスイッチ(Key)で切り替えて(Shiftして)情報を伝送するので、このように呼ばれる。これらの変調方式では、1回の変調(1つの波形)で、1ビット(0または1の2値)しか伝送することができない。

BPSKを拡張したQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)では、デジタル信号の00、01、10、11に対応した、90°ずつ位相が異なる4つの波形を切り替えて情報を伝送する。QPSKでは、1回の変調(1つの波形)で2ビット(00または01または10または11の4値)伝送することができる。このように、1回の変調で2ビット(4値)以上伝送できるものを高次変調(または多値変調)と呼ぶ。その他の高次変調として、ASKとPSKを組み合わせたQAM(Quadrature Amplitude Modulation)があり、16QAMでは1回の変調(1つの波形)で4ビット(16値)伝送できる。

変調については、以下を参照。

変調のいろいろ

千葉工業大学 佐波研究室のホームページ > 講義関連 > デジタル通信 > 第5章: ディジタル変調の基礎

impedance(インピーダンス)

電気計測に関する翻訳に、impedance(インピーダンス)という言葉がよく出てくる(例えば、Agilent 4294A プレシジョン インピーダンスアナライザ 40 Hz~110 MHz)。

インピーダンスとは、交流回路における電流の流れにくさを表すもので、直流回路における電流の流れにくさ(抵抗R)に相当するものである。オームの法則、R=V/I(V:直流電圧、I:直流電流)との類似から、交流電圧Vac(t)と交流電流Iac(t)を用いて、インピーダンスZは、

Z=Vac(t)/Iac(t)

と表される。また、一般に交流回路ではVac(t)とIac(t)の位相が異なるので、Zは、

Z=R+Xj (R:抵抗、X:リアクタンス、j:虚数単位) (1)

のように複素数で表す。

以下で、抵抗、コンデンサ、コイルに交流電圧を印加した場合を考える。

[1]抵抗Rに交流電圧Vac(t)=V0cos(ωt)を印加した場合は、生じる交流電流の位相は変わらないので、インピーダンスの虚数成分(直交成分)Xは0であり、Z=Rである。

[2]キャパシタンスCのコンデンサに交流電圧Vac(t)=V0cos(ωt)を印加した場合は、よく知られたQ=CVの関係を時間tで微分し、電流の定義、Iac(t)=dQ/dt(単位時間当たりの電荷の変化)を用いると、

Iac(t)=dQ/dt=C(dV/dt)=-ωCV0sin(ωt)=ωCV0cos(ωt+π/2) 

となり、電流Iac(t)は、電圧Vac(t)よりも位相が90°(π/2)進む。

複素平面上では、cos(ωt+π/2)は、cos(ωt)をπ/2回転させたもの(j(虚数単位)を掛けたもの)なので、cos(ωt+π/2)=jcos(ωt)と表される。したがって、キャパシタンスCのコンデンサのインピーダンスZは、複素数表示で、

Z=Vac(t)/Iac(t)=V0cos(ωt)/(ωCV0cos(ωt+π/2))=1/(jωC)=-j/(ωC)

と表される。これは、(1)式でR=0、X=-1/(ωC)としたもので、-1/(ωC)は容量性リアクタンスと呼ばれる。

[3]インダクタンスLのコイルに交流電圧Vac(t)=V0cos(ωt)を印加した場合は、回路を流れる電流Iac(t)により、電磁誘導の法則、L(dIac(t)/dt)=-V_L(t)からコイルに自己誘導起電力V_L(t)が生じる。キルヒホッフの第2法則からVac(t)+V_L(t)=0なので、L(dIac(t)/dt)=Vac(t)を積分すると、

Iac(t)=(1/L)∫V0cos(ωt)dt=(1/ωL)V0sin(ωt)=(1/ωL)V0cos(ωt-π/2)

となり、電流Iac(t)は、電圧Vac(t)よりも位相が90°(π/2)遅れる。

複素平面上では、cos(ωt-π/2)は、cos(ωt)を-π/2回転させたもの(-jを掛けたもの)なので、cos(ωt-π/2)=-jcos(ωt)と表される。したがって、インダクタンスLのコイルのインピーダンスZは、複素数表示で、

Z=Vac(t)/Iac(t)=V0cos(ωt)/(1/ωL)V0cos(ωt-π/2)=1/(-j/ωL)=jωL

と表される。これは、(1)式でR=0、X=ωLとしたもので、ωLは誘導性リアクタンスと呼ばれる。

以上から、抵抗、コンデンサ、コイルが直列に接続された回路の合成インピーダンスは、

Z=R+(-j/(ωC))+(jωL)=R+j(ωL-1/(ωC))

のように簡単に求められる。

また、抵抗、コンデンサ、コイルが並列に接続された回路では、それぞれのインピーダンスの逆数のアドミタンスを足して、全体のアドミタンスを求め、その逆数をとってインピーダンスを求める。

インピーダンスについては、以下を参照

わかりやすい高校物理の部屋コイルを流れる交流コンデンサーを流れる交流

エンジニアのためのインピーダンス測定の8つのヒント