Cole-Cole plot(Cole-Coleプロット)

誘電率測定に関する翻訳に、Cole-Cole plot(Cole-Coleプロット)という言葉がよく出てくる(例えば、LCRメータおよびインピーダンス・アナライザを用いた誘電率/透磁率の測定ソリューションのp12)

誘電体にDC電圧(電界)を印加すると、誘電体内の電荷の分布に偏りが生じる(この現象を分極と呼ぶ)。分極には、電子分極、原子分極(イオン分極)、双極子分極(配向分極)がある。電子分極は、電界により原子の電子雲と原子核の相対位置が変化する(誘起双極子モーメントが生じる)ことによる分極である。原子分極は、電界によりイオン性結晶などで正に帯電した原子と負に帯電した原子の相対位置が変化することによる分極である。配向分極は、電界を印加していない状態では、永久双極子モーメントを持つ分子(水などの有極性分子)がブラウン運動によりランダムな方向を向いているのが、電界の印加により永久双極子モーメントがそろうことにより生じる分極である。

これらの分極は、静電界(DC電圧)をかけた場合は同時に現れるが、振動電界をかけた場合は、(電子や原子は分子に比べて軽く、周囲との相互作用が少ないので)電子分極や原子分極は振動数(周波数)が高くても振動電界に追随しやすく、誘電率(複素誘電率の実数部ε’と虚数部ε”)は高い周波数まで一定であり、原子分極では赤外領域に、電子分極では紫外線領域に共鳴が生じ、誘電率に共鳴型の分散(周波数による変化)が生じる。一方、配向分極では、周波数が低い場合は、振動電界に永久双極子モーメントが追随できるので誘電率は一定であるが、RFやマイクロ波周波数領域で追随できなくなり、誘電率(ε’)が低下し、誘電損失(ε”)がピークを示す。このε’の低下は、電界を印加した後、永久双極子モーメントがそろうまで少し時間がかかることに起因するもので、誘電緩和と呼ばれる。すなわち、配向分極は緩和時間τで特徴付けられる緩和型の分散を示す。

Cole-Coleプロットは、KENNETH S. COLEとROBERT H. COLEによる誘電緩和を表わす複素誘電率ε*の半経験式

ε*=ε’-iε”=ε_∞ + (ε_0-ε_∞)/(1+(iωτ)^(1-α)、ε’:ε*の実数部、ε”:ε”の虚数部、ε_∞:周波数が∞のときの誘電率、ε_0:周波数がゼロのときの誘電率、i:虚数記号、ω:周波数、α:0~1のパラメータ(α=0ときは誘電緩和に関するデバイの理論式を与える)、τ:緩和時間(電場をかけてから双極子モーメントが十分に配向するまでの時間)

を、その論文で、横軸をε’、縦軸をε”にして、ωを変化させながらプロットしたものが起源である。Cole-Coleプロットは、伝達関数のナイキスト線図と同じものである。

誘電緩和については、以下を参照。
一般社団法人日本食品工学会のホームページ > 学会誌 > 第9巻 No.3 > 電気物性と誘電緩和 本文PDF[1396K]

Dispersion and Absorption in Dielectrics(英語pdf、KENNETH S. COLEとROBERT H. COLEの論文)

デバイの理論式の導出については、以下を参照。

マイクロ波領域の誘電緩和で何がわかるかのp6の「2.2 デバイ型の複素誘電率スペクトルの導出」

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