OCXO

周波数カウンタに関する翻訳で、OCXOという言葉がよく出てくる(例えば、RF/ユニバーサル周波数カウンタの比較ガイド)。OCXOは、Oven-Controlled Xtal(crystal) Oscillator(オーブン(温度)制御型水晶発振器) の略である。

最近のデジタル機器の急増により、さまざまなデジタルデータが有線、無線を問わず伝送されている。これらのデータを誤りなく送受信するには、送信側と受信側で正確にタイミングを合わせる必要があり、そのための正確な基準クロック信号の発生に水晶発振器が用いられている。

水晶発振器とは、水晶振動子を共振回路に使用した発振器で、水晶振動子の極めて安定で正確な固有振動を利用して基準周波数を発生させられる。LC発振器やCR発振器の温度に対する周波数安定度が100ppm/℃程度であるのに対して、水晶発振器の周波数安定度は数ppm/℃である。

水晶振動子の温度による周波数変化と反対の特性を持つ回路を追加して、さらに周波数安定度を高めたものはTCXO(Temperature Compensated Xtal Oscillator:温度補償型水晶発振器)と呼ばれ、100ppb/℃程度の周波数安定度があり、身近なものでは携帯電話などのGPS信号受信用に使用されている。

OCXOは、温度による周波数変化が最小となる温度で、その温度を一定に保つ(水晶振動子を恒温槽(オーブン)内に配置する)ことにより、極めて高い周波数安定度が得られるようにした水晶発振器である。10ppb/℃以下の周波数安定度が得られ、携帯電話の基地局、放送機器、測定器などに使用されている。

水晶発振器については、以下を参照。

水晶デバイス基礎講座

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droop(ドループ)

パルス波形測定に関する翻訳で、droop(ドループ)という言葉がよく出てくる(例えば、8990Bピーク・パワー・アナライザおよびN1923A/N1924A広帯域パワー・センサのp5)。

パルス波形の形状を表わすパラメータとして、パルス幅、立ち上がり時間、立ち下がり時間、ドループ(サグとも呼ばれる)などがある。

理想的な方形パルスは、時刻T=t_startの瞬間に電圧V_Lowから電圧V_Highに立ち上がり、電圧V_Highを一定に保って、時刻T=t_stopの瞬間に電圧V_Highから電圧V_Lowに立ち下がり、電圧V_Lowを一定に保つ。したがって、パルス幅はt_stop - t_startで、立ち上がり時間と立ち下がり時間はゼロである。

しかし、現実のパルス波形では、電圧V_Lowから電圧V_Highに立ち上がる(電圧V_Highから電圧V_Lowに立ち下がる)のに有限の時間がかかる。したがって、パルス幅は、通常、パルス波形のパルス振幅(V_High - V_Low)の50%の(立ち上がり時間区間と立ち下がり時間区間の)時刻ポイント間で定義される。立ち上がり時間は、通常、立ち上がり時間区間でパルス振幅(V_High - V_Low)の10%に対応する時刻ポイントから90%に対応する時刻ポイントまでの時間として定義される(立ち下がり時間は90%のポイントから10%のポイントまでの時間)。また、実際のパルス波形では、立ち上がった後から立ち下がる前までのパルスのトップ部分(理想パルス波形では、電圧V_Highが一定の部分)の電圧は一定ではなく、減少する場合があり、これがドループ(サグ)である。

パルス波形のパラメータについては、以下を参照

神戸大学 大学院理学研究科 物理学専攻 粒子物理学研究室の蔵重久弥 教授のページ > Lectures/講義 > 物理学実験Ⅱ・Ⅲ「パルス技術」のテキスト