atomic force microscope(原子間力顕微鏡)

ナノ測定に関する翻訳で、atomic force microscope(原子間力顕微鏡)という言葉がよく出てくる(例えば、ナノ測定ソリューション カタログ)。

原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)は、走査型プローブ顕微鏡(SPM:Scanning Probe Microscope)の一種である。光や電子の結像により観察を行う光学顕微鏡や電子顕微鏡とは異なり、走査型プローブ顕微鏡は、微小な探針(プローブ)を試料の表面に近づけて、試料と探針間に生じる量子力学的、電磁気学的な物理量の変化を検出しながら試料表面を走査(スキャン)することにより、原子レベルの分解能で試料表面の3次元画像(凹凸)を得る装置である。

走査型プローブ顕微鏡として最初に開発されたものは、1981年にIBM研究所で開発された走査型トンネル顕微鏡(STM:Scanning Tunneling Microscope)で、試料と探針間のトンネル電流(量子力学のトンネル効果に起因)を検出して動作するものである。しかし、これは導電性の試料でないと観察できないという欠点があった。これに対して、原子間力顕微鏡は、試料と探針間に働く量子力学的な力(ファンデルワールス力)を検出するもので、絶縁体の試料も観察でき、広く使用されるようになった。

原子間力顕微鏡については、以下を参照

(高速)原子間力顕微鏡の基礎とナノバイオへの展開

chip rate(チップ・レート)

無線通信測定に関する翻訳で、chip rate(チップ・レート)という言葉がよく出てくる(例えば、3GPP W-CDMA携帯電話端末のデザインとテストのp5)。

CDMA方式の携帯電話や無線LANなどには、秘匿性があり干渉/妨害信号に強いスペクトラム拡散という通信方式が使用されている。スペクトラム拡散には、周波数ホッピング(FHSS:Frequency Hopping Spread Spectrum)方式と直接拡散(DSSS:Direct Sequence Spread Spectrum)方式がある。

直接拡散方式は、PSKやFSKなどによる1次変調(狭帯域変調)の後に、擬似ランダム・ビット・シーケンスにより生成したPN(擬似ランダム・ノイズ)コード(拡散コード)を使って2次変調(広帯域変調)を行う方式である。この拡散コードは、「1」と「-1」がランダムに現れる擬似乱数であり、このコードのビットは、ベースバンド信号(送信データ)のビットと区別するために「チップ」と呼ばれ、そのデータ・レートがチップ・レートである。したがって、2次変調後の変調波はチップ単位で変化している。また、 送信データ速度(ビット・レート)と拡散コード速度(チップ・レート)との比は、拡散率(Spreading Factor)と呼ばれている。

スペクトラム拡散とチップ・レートについては、以下を参照。

電波で情報を送れる仕組み 2

interleave(インタリーブ)

デジタイザやオシロスコープに関する翻訳で、interleaving(インタリーブ)という言葉がよく出てくる(例えば、M9703A AXIe高速デジタイザ/広帯域デジタル・レシーバのp2)。

デジタイザやオシロスコープには、アナログ信号をサンプリングしてデジタル信号に変換するために、A/Dコンバータが搭載されている。しかし、A/Dコンバータのサンプリング・レートには限界があるため、高速なアナログ信号をリアルタイムにサンプリングするための手法として、インタリーブ・サンプリングが用いられている。

インタリーブ・サンプリングとは、複数のA/Dコンバータを並列動作させることにより、サンプリング・レートを向上させる手法である。例えば、2個のA/Dコンバータ(ADC1とADC2)を並列動作させる場合は、ADC1とADC2に供給するサンプリング・クロックの位相を180度ずらすことにより、(1個のA/Dコンバータ単独での隣接サンプリング・ポイント間のちょうど真ん中でサンプリングされるので)1個のA/Dコンバータ単独での動作の2倍のサンプリング・レートが実現される。インタリーブ・サンプリングにより、N個のA/Dコンバータを並列動作させると、N倍のサンプリング・レートが得られるが、並列動作させるA/Dコンバータの特性の不一致やA/Dコンバータに供給するクロックの位相遅延誤差により、A/D変換された波形にインターリーブ歪みが生じるという問題がある。

インタリーブ・サンプリングについては、以下を参照。

オシロスコープのサンプリング・レートとサンプリング忠実度の評価:
正確なデジタル測定の方法
のp6~p14