LTCC

高周波回路測定に関する翻訳で、LTCCという言葉がよく出てくる(例えば、Agilentインピーダンス/ネットワーク解析Application Listのp26)。LTCCは、Low Temperature Co-fired Ceramicsの略で、低温同時焼成セラミックスと訳される。

高周波回路を搭載する基板として、ガラスエポキシ基板、テフロン基板、セラミック基板などがある。ガラスエポキシ基板は、PCのマザーボードやモバイル機器などの民生用に広く使用されていて安価である。テフロン基板は、高周波特性が良好(高周波損失が小さい)だが高価であり、近年、ガラスエポキシ基板でも必要な性能が得られるようになってきたので、民生用にはあまり使われていない。セラミック基板は、高周波損失が小さく、酸化アルミニウム(アルミナ)が原料なので熱伝導率が高い(放熱特性に優れている)が、非常に高価であり、スーパーコンピュータや航空宇宙などの分野での利用に限られている。

LTCC(低温同時焼成セラミックス)基板の「低温」とは、タングステンを導体成分としたセラミック基板(アルミナが主成分)の焼成温度(約1600度)よりも、焼成温度が低い(約900度)ことから、そう呼ばれている。「同時焼結」とは、「導体部分」と「セラミック部分」を同時に焼結して高密度配線、積層化を容易に実現できるという意味である。LTCCでは、焼成温度の低いセラミックの開発により、タングステンより導体損失が小さく融点の低い銀や銅を導体成分として用いて同時焼成できるようになった。LTCCは、当初、銅を導体とすることによる信号の高速伝搬特性を活用してスーパーコンピュータのマザーボード用として実用化されたが、現在では、高密度配線、積層化を容易に実現できることから、小型化の要求の強い携帯電話などのモバイル機器に広く用いられている。

LTCCについては、以下を参照。

公益社団法人 日本セラミック協会のホームページ > セラミック博物館 > セラミックス アーカイブス > 耐熱性・小型化を生かした 自動車用セラミック多層基板・パッケージ

雲の上で

1000Kar_01先週は夏休みということで、またまた涼しい場所を求めて旅に出ました。去年あいにく天気に恵まれなかった、千畳敷カールへのリベンジです。

出発の際、東京は雨でしたが、現地は天気もばっちりで雲の上のトレッキングを思う存分に楽しみました。おかげで心身ともにリフレッシュすることが出来ました。

Q factor(Q値)

LCR回路測定に関する翻訳で、Q factor(Q値)という言葉がよく出てくる(例えば、Agilentインピーダンス/ネットワーク解析Application Listのp8)。Q factorは、Quality factorの略である。

Q値とは、一般に、振動系の共振の鋭さの指標であり、以下のように定義される。

Q=(系に蓄えられているエネルギー)/(1サイクルの間に失われるエネルギー)

ここで例として、直列LCR回路に交流電圧Vを印加して、交流電流Iが流れる場合を考える。直列LCR回路のインピーダンスZは、

Z=R+j(ωL-1/(ωC))

なので、その大きさ|Z|は、

|Z|=√(R^2+(ωL-1/(ωC))^2)

であり、ω=ω0=1/√(LC)のときに最小値(|Z|=R)になる。この状態が共振状態であり、電流の大きさ|I|が最大値(|I|=I0)になる。

直列LCR回路に蓄えられているエネルギーEsは、コンデンサに蓄えられているエネルギーとコイルに蓄えられているエネルギーの和なので、コンデンサにかかる電圧をVcとして、

Es=(1/2)LI^2+(1/2)CVc^2

と表される。Vc=Asin(ωt)とすると、I=C×(dVc/dt)=ωCAcos(ωt)なので、

Es=(1/2)L×ω^2×C^2×A^2×cos^2(ωt)+(1/2)C×A^2×sin^2(ωt)

となる。したがって、共振状態(ω=ω0=1/√(LC))のときに、この回路に蓄えられているエネルギーは、

Es=(1/2)C×A^2  (1)

となる。

また、この回路で、1サイクルの間に失われるエネルギーEdは、抵抗Rで消費される電力×1サイクルの時間(1/ω0)なので、

Ed=R×Irms^2×(1/ω0)=R×(ω^2×C^2×A^2/2)×(1/ω0)=((1/2)×((RC)/(ω0L))×A^2))  (2)

となる。(1)式と(2)式から、Qは、

Q=Es/Ed=ω0L/R=1/(ω0RC)  (3)

となる。

一方、共振の鋭さの指標である、

ω0/(ω2-ω1)、ω1とω2は、電流が最大電流I0の1/√2となるときの周波数

から(3)式を計算することもできる。

計算の概略は、共振回路を流れる電流の大きさ|I|=|V|/|Z|=|V|/√(R^2+(ωL-1/(ωC))^2)とその回路の共振時(ω=ω0=1/√(LC)のとき)の電流の大きさI0=V/Rから、|I|/|I0|=R/√(R^2+(ωL-1/(ωC))^2)であり、ω=ω1、ω2のときに|I|/|I0|=1/√2なので、ω1とω2が求まり、ω1-ω2=R/Lとなり、ω0/(ω2-ω1)を計算すると(3)式になっている。

Q値については、以下を参照。

東京大学大学院新領域創成科学研究科複雑理工学専攻 牧野泰才氏のページ > 資料 >
Q値