DWDM(高密度波長分割多重化)

光測定に関する翻訳に、DWDM(高密度波長分割多重化)という言葉がよく出てくる(例えば、81980A、81960A、81940A、81989A、81949A、81950Aコンパクト波長可変レーザ光源のp2)。DWDMは、Dense Wavelength Division Multiplexingの略で、「高密度波長分割多重」や「高密度波長分割多重方式」とも訳される。

光ファイバケーブルによる通信は、日本では1980年代初頭にNTTによる電話回線の光ケーブル化により実用化された。1990年代中頃以降のインターネットの急速な普及により、特に都市間を結ぶコア(基幹)ネットワークや都市内を結ぶメトロネットワークで大量のデータを伝送する必要が生じたため、それまでの1本の光ファイバで1つの光搬送波(波長)を利用する方式から、1本の光ファイバで複数の光搬送波(波長)を利用する方式が開発された。これが、WDM(波長分割多重化)と呼ばれる方式である。WDMによる通信容量拡大の利点は、時分割多重化や変調方式を変更する方法に比べて、別の波長用の送受信装置を追加するだけで既存の送受信装置をそのまま利用でき低コストであるという点にある。

WDMには、粗密度波長分割多重化(Coarse Wavelength Division Multiplexing、CWDM)と高密度波長分割多重方式(Dense Wavelength Division Multiplexing、DWDM)がある。

CWDMは、波長間隔が広い(20 nm)ので、各波長を分離するフィルタなどの部品を安価に製造でき、DWDMに比べて低コストでネッワークを実現できるが、多重化可能な波長は10数個程度である。また、波長間隔が広いので、すべての波長の光を同時に増幅できる光増幅器を利用できないことから、CWDMは比較的短い距離(数十km)のメトロネットワークで利用されている。

DWDMは、波長間隔が狭く(1 nm以下)数十個以上の波長を多重化可能であるが、高精度の部品や制御技術が必要なので、高価なネットワークになる。また、DWDMのバンド幅をカバーするエルビウム・ドープ光ファイバー増幅器(EDFA)が開発されたことにより、DWDMは大容量伝送が必要な(高コストでもペイする)長距離のコアネットワークや光ファイバー海底ケーブルで使用されている。

DWDMについては、以下を参照。

昭和電線ホールディングス株式会社のホームページ > 企業情報 > SWCCグループ研究開発 > 昭和電線レビュー > 昭和電線レビュー VOL.51 > WDM通信システムとフォトニックネットワークの展望(370KB)

diplexer(ダイプレクサ)

測定器に関する翻訳で、diplexer(ダイプレクサ)という言葉がよく出てくる(例えば、ミリ波・サブミリ波周波数エクステンダーのp2)。

diplexer(ダイプレクサ)は、マルチプレクサの最も簡単なもので、2つのポートに入力された信号を混合して1つのポート(コモンポート)から出力したり、1つのポートに入力された信号を分離して2つのポートから出力する3ポートデバイスである。無線通信の分野では、ダイプレクサは、ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、またはバンドパスフィルタを用いて信号を混合したり分離するので、周波数が離れている2つの比較的広い周波数バンドの混合や分離に使用される(例えば、地上波TVアンテナからの信号とBSアンテナからの信号を混合して一本のアンテナ線で送るための混合器や、混合されて一本のアンテナ線で送られてきた地上波TV信号とBS信号を分離してテレビのそれぞれのアンテナ端子に接続するための分波器としてよく見かける)。

diplexer(ダイプレクサ)によく似た用語に、duplexer(デュプレクサ)という用語がある。デュプレクサは、ダイプレクサとは異なり、Q値の高いキャビティ共振器を用いて、送信機と受信機が非常に近い周波数で同じアンテナを共用するために、2つの入力を混合したり分離するための3ポートデバイスである(例えば、レーダー信号の送受信や携帯電話のアップリンク/ダウンリンクで同じアンテナを共用するために使用されている)。

しかし、diplexer(ダイプレクサ)とduplexer(デュプレクサ)は、2つの入力を混合したり分離するための3ポートデバイスとして、区別なく使用されている場合もある。

diplexer(ダイプレクサ)については、以下を参照。

diplexer vs duplexer-difference between diplexer and duplexer(英語ページ)

Duplexers, Diplexers and Circulators(英語pdf)