electrical length(電気長)

高周波測定に関する翻訳に、electrical length(電気長)という言葉がよく出てくる(例えば、誘電体測定の基礎のp22)。

伝送媒体中の電磁波の速度Vは、伝送媒体の比誘電率をεr、比透磁率をμrとすると、

V = c/√(εr×μr)、(ここで、c=真空中の電磁波の速度)

なので、伝送媒体中の電磁波の速度Vは、真空中の電磁波の速度cより遅くなる(ポリエチレンを充填材(伝送媒体)にした同軸ケーブルでは、εr=2.3、μr=1なので、V=0.66×c)。

また、波の波長(λ)と周波数(f)と速度(v)の間には、λ=v/fという関係があり、真空中と伝送媒体中では周波数(f)は変化しないので、波長(λ)は真空中よりも伝送媒体中の方が短くなる。

以上から、物理的な長さ(物理長)と電気的な長さ(電気長)は、真空中では同じある(電磁波の速度(波長)が変わらないので)が、伝送媒体中では電気長の方が長くなる(電磁波の速度が遅くなる(波長が短くなる)ので)。

伝送ラインの電気長が異なると(ケーブル材料の材質や構造が異なると)、伝搬遅延差が生じ、測定誤差につながる。

高原とビール

komaganeBeer夏休みは涼しい場所へ、ということで長野県の駒ヶ根に行ってきました。

前半は天気に見放されていまいちでしたが、後半は好天続き。地元の「南信州ビール」をたっぷり味わいつつ、さわやかな高原のひとときを満喫しました。

ゆっくり、まったり、と過ごすには最適な避暑地でした。いつかまた訪れてみたいと思います。

Harmonic Balance(ハーモニック・バランス)

回路シミュレーションに関する翻訳に、Harmonic Balance(ハーモニック・バランス)という言葉がよく出てくる(例えば、Agilent EEsof EDA W2300 ハーモニック・バランス・エレメント)。

多くの高周波回路には長い時定数が含まれているため、回路シミュレーションでは、過渡状態から定常状態に収束するまで、最低周波数の正弦波の周期の何倍にも渡る時間で数値積分を実行する必要があり、時間かかる。これに対して、通常欲しいのは、回路の定常動作である。このような場合に、ハーモニック・バランス・シミュレーションを使用すると、直接回路の定常状態のスペクトラム応答を求めることができ、シミュレーション時間が短縮される。

ハーモニック・バランス・シミュレーションでは、「与えられた正弦波信号に対して、回路に定常状態(定常解)が存在し、それが有限のフーリエ級数によって表現される」と仮定して、反復計算が行われる。図1のように、キルヒポッフの電流則を周波数領域で表わす。このとき、非線形素子(ここでは、ダイオード)を流れる電流は、図2のように、素子に印加される電圧スペクトラムを時間領域に逆フーリエ変換し、その電圧波形を印加したときの電流を(SPICEの時間領域モデルを使用して)計算し、それをフーリエ変換することにより、電流スペクトラムを求める。初期値(信号源電圧のみが与えられた状態)から出発して、各周波数成分毎に各ノードの電流の和がゼロになるまで(ハーモニック成分がバランスするまで)反復計算を行ない、定常解(定常状態のスペクトラム応答)を求める方法がハーモニック・バランス法である。

図1

図1

図2

図2