Gummel-Poon model(Gummel-Poonモデル)

図1

図1


半導体デバイス測定に関する翻訳で、Gummel-Poon model(Gummel-Poonモデル)という言葉が出てくる(例えば、IC-CAP デバイス・モデリング・ソフトウェアのp6)。

Gummel-Poonモデルは、以下のようなバイポーラ・トランジスタ(BJT)のデバイス・モデルである。

最初に、トランジスタを2つのpn接合ダイオードの結合と考える、Ebers-Mollモデルを説明する。pn接合ダイオードの理論的なI-V特性は、図1の1番上の式で与えられる。トランジスタのB(ベース)-C(コレクタ)間、B(ベース)-E(エミッタ)間をダイオードと考え、ダイオードの理論式を適用し、トランジスタの順方向電流増幅率と逆方向電流増幅率、キルヒホッフの電流則を用いると、Ebers-Mollモデルは、図1の下図のような等価回路で表わされる。

図2

図2


Gummel-Poonモデルは、Ebers-Mollモデルに、以下を追加したモデルである。

1)ベース、エミッタ、コレクタの寄生抵抗を追加する(図2の上図)。

2)トランジスタのIc-Vce特性を現実的な特性にするために、ベース幅変調(アーリ効果)を導入する(図2の下図)。

図3

図3


3)空乏層容量(pn接合により生じる、図3の上図)、接合容量または拡散容量(pn接合に順バイアスを印加したときに現れる、図3の中図)、寄生容量(サブストレート(S)の存在による、図3の左下図)による電荷蓄積効果を導入する。

以上をまとめると、Gummel-Poonモデルは、図3の右下図のような等価回路となる。

pn接合ダイオード、バイポーラ・トランジスタ、Ebers-Mollモデルについては、以下を参照。

山形大学大学院理工学研究科廣瀬文研究室 > 半導体デバイス教科書プロジェクトの第3章 pn接合第5章 バイポーラトランジスタ

Gummel-Poonモデルについては、以下を参照

大阪大学 オープンコースウェア > 工学部・工学研究科 > 286162 – 高周波集積回路設計, Spring Term, 2005 > 講義資料 > rf-no-2

An Integral Charge Control Model of Bipolar Transsisters(英語pdf、原論文)

directivity(方向性)

ネットワーク・アナライザ測定に関する翻訳で、directivity(方向性)という言葉がよく出てくる(例えば、ネットワーク・アナライザ測定を成功させる8つのヒントのp5)。

ネットワーク・アナライザ測定では、被測定デバイス(DUT)に信号を入力して、その出力を測定することにより、Sパラメータなどが計算される。Sパラメータを計算するためには、信号をDUTに順方向に入力した場合と逆方向に入力した場合の、DUTに入力される信号(入射信号)、DUTにより反射される信号(反射信号)、DUTから出力される信号(伝送信号)を測定する必要がある。これらの信号は、方向性結合器(方向性カプラ)を用いて取り出し、レシーバ/ディテクタに送られて測定される。

方向性結合器(方向性カプラ)には、メインパスと結合パスがあり、メインパスを順方向に通る電力の一部が結合パスから出力される。結合される電力の割合は、結合係数(coupling factor)として、

結合係数(dB)=-10log(順方向結合電力/順方向入射電力)

で表される。結合係数が20dBのカプラでは、信号源から0dBm(1mW)の電力がメインパスに順方向で入力されると、0dBm-20dB=-20dBm(0.001mW)の電力が結合パスから取り出される。

理想的なカプラでは、カプラを逆方向に通過する信号は結合パスから取り出されることはないが、現実には、カプラのポート間のアイソレーションが有限であるために、結合パスに信号が漏れる。この逆方向の信号が結合ポートに漏れる割合はアイソレーション(isolation)と呼ばれ、

アイソレーション(dB)=-10log(逆方向結合電力/逆方向入射電力)

で表される。アイソレーションが50dBのカプラでは、信号源から0dBm(1mW)の電力がメインパスに逆方向で入力されると、0dBm-50dB=-50dBm(0.000001mW)の電力が結合パスから漏れる。

方向性(directivity)とは、カプラのメインパスを流れる信号の方向の違いによる、結合パスから取り出される電力の大きさの違いであり、結合係数とアイソレーションの差(dB単位)として、

方向性(dB)=アイソレーション(dB)-結合係数(dB)

で表される。これは、カプラがどの程度入射信号と反射信号を区別できるかを表している。結合係数が20dB、アイソレーションが50dBのカップラでは、方向性は、50dB-20dB=30dBとなり、測定信号に最大30dB小さい誤差信号が含まれていることを意味している。したがって、結合係数が一定であれば、方向性(アイソレーション)が大きいほど良好な方向性結合器(方向性カプラ)と言える。

方向性については、以下を参照

ネットワーク・アナライザのアーキテクチャのp3~p5

方向性結合器については、以下を参照

無線工学の基礎(1アマの無線工学) > J 計測 > HJ06 高周波計測 > H1708A25

「翻訳は陸上競技」

最近ようやく、英語の文意をくみ取って日本語で文章を作成できるようになってきた。正確に言えば、日本語に訳す際の「迷い」が減ってきた。

英語の文意を理解する能力と、その意味を日本語で書き表す能力とは異なる。英語を学んでいれば、そのうちに英語は理解できるようになるだろう。しかし、英語が理解できるからといって日本語文章も作成できるとは限らない。つまり、英語も日本語も理解できるからといって、日本語文章を作成できるかとなると、そうは問屋が卸さない。

「英語の意味は、わかるんだけど…」
「英語は、こういった意味なんだけど…」

翻訳の現場で時折耳にする会話だが、「わかるんだけど…」や「こういった意味なんだけど…」で留まったのでは、プロとしては失格だろう。

とは言いつつ、かく言うわたしも「自分も失格だな~」と痛感することが未だに多い。特に、マーケティング分野の翻訳ではそうだ。どういう日本語にすれば、英語を書いた人の意図が正確に伝わるのか。1単語を訳すだけでも、数日間悩み続けたりすることもある。言いかえれば、自信のないローカリゼーションサービスをお客様に提供するわけにはいかないからだ。それは、プロとしてのプライドであり、自信が持てるまで自らを追い込んでプロジェクトに取り組まなければ、成果を達成できたと自分自身が感じることもなく納得できないからだ。

校正業務では、1単語の訳に苦しみながらも、同時進行的に1時間で数千ワードは読み込み完成させないとビジネスにはならい。1日数万ワードの翻訳校正に音を上げてはいられないのが現実である。そのため夕方頃になると、「脳が疲弊」した状態に陥いる。モニター画面を見続けた影響で、まぶたは熱を持ち頭はくらくら。100メートルを全力疾走したかのように(呼吸するのを忘れていたのか)、気付けば呼吸困難で深呼吸を繰り返している。

「通訳とは格闘技」と通訳者の長井鞠子さんがテレビで語っていたが、一方「翻訳は」何に例えられるのだろうか。思うに「翻訳は陸上競技」なのだろう。100メートル走もあればフルマラソンもある。砲丸投げもすれば棒高跳びにも挑む。選手になるには、日々の厳しいトレーニングにも耐え、全天候型で全種目に出場可能な強靭な身体をつくらなければならない。

しかし、勝負の世界では打ちのめされることもある。勝利を逃し敗退したとしても、さらなる記録(成果)を目指し自分自身に挑み続けるのである。まさに「翻訳は陸上競技」だ。