「歴史に学ぶことの大切さ」

これまでになく、世界的にも「歴史に学ぶことの大切さ」が叫ばれている。歴史から学ぶことを怠れば、同じ過ちを繰り返すことになるからだ。

歴史的な哲学者などが、そのことを言い続けてきた。代表的なフレーズを挙げるとしたら、直ぐに頭に浮かぶのは以下の2つだろうか。

We learn from history that we do not learn from history.
– Georg Wilhelm Friedrich Hegel

Those who cannot remember the past are condemned to repeat it.
– George Santayana

これらは、わたし自身が講演や寄稿の際によく触れるため丸暗記しているフレーズでもある。

こういうフレーズが歴史に残るということは、人類は同じ過ちを繰り返し続けていることの証でもある。歴史から学んでいないことを悟りながらも、人類はそれを繰り返していることになる。英語で表現すれば、以下のようになるのだろう。

The only thing we learn from history is that we never learn from history.

歴史を知れば、歴史から学ぶことの大切さに気付くものなのだろうが(The more you know about the past, the more you realize the importance of learning from the past)、それでも歴史は繰り返している(History repeats itself)。

いつも、講演や寄稿の最後に記すわたしのコメントを一言…。

“歴史は繰り返されている。歴史に背を向けたときに、人類は再び大きな過ちを犯すことになるだろう”

History is repeating. When turning our backs on the history, humankind will continue to make the same grave mistakes.

敢えてしつこく繰り返し述べるとしたら…

“It’s never too late to learn from history, because history is repeating. It’s never too late to become what we might have been.

遅きに失した悲劇は無数に存在する。が、あきらめない姿勢が大切なのだと思う。

Widget(ウィジェット)とGadget(ガジェット)

ウィジェットという用語も最近は聞き慣れてきたが、若いころ(20代の中頃までは)は聞いたことがなかった。酒飲みのわたしが、”ウィジェット”と聞いて頭に浮かぶのは、ギネスビール(あの黒ビール)缶の中に入っている”あのコロコロ”と鳴るやつだ。

ドラフトギネス缶を振ったことのある人なら、コロコロという音に”缶の中に何か入っているのだろうか”と気になったに違いない。好奇心にまかせ、飲み終わった後に缶をペンチで切り開いた人もいるだろう。”何かわかんないけどプラスチック製のような白い丸いボール”が入っているのを見て、”これが入っているから泡がクリーミーになるんだ~”と、これまたよくわかんないけど納得したのでは。あの白い丸いやつのことを”フローティングウィジェット”と呼ぶが、英語では何か名前はわからないけど、小さな装置のようなパーツみたいなものをウィジェットとかガジェットとか言う。

ガジェットという単語は昔から日常で普通に使われているが、近年は電子的なデバイスを指したりもする。ウィジェットもガジェットも”シンプルで便利なアプリ”の意味で使われたり、あるいはアプリへのアクセスを意味する簡単なプログラミングを指したりもする。ガジェットは特に、GUI(グラフィカルユーザーインターフェース)の要素が強い小さなプログラムと言ったところだ。

最近はあまり聞かなくなったブログパーツはウィジェットである。ウィジェットとガジェットの違いを、その所有性の有無で問うケースもあるが、一般のユーザーにとってはそんなことは関係なく、”便利なミニアプリ”であり、”あれば便利なアクセサリーソフト”である。どちらも、ちょっとした知識があれば比較的簡単に作成できるが、その必要性を感じないほどに、さまざまなウィジェットやガジェットがWeb上にも溢れている。例えば、カレンダー、時計、メモ帳、地図、最新ニュースの表示など、例を挙げればキリがないほどだ。。

スマホが流行っている中、ウィジェットもガジェットも、その地位を確立したと言える。ウィジェットは、わたしが大人になってから生まれた言葉なのだが、ガジェットなら子供のころから日常で良く使っていた単語でもある。何か面白いちっちゃなものがあると”ガジェット””ガジェット”と呼んで遊んでいた。が、物心ついたときには、人類最初の原子爆弾のコードネームに用いられたと聞かされた。その後、広島と長崎の原子爆弾が”リトルボーイ”と”ファットマン”というコードネームであることも教わった。

いつも感じることがある。言葉は生きものだな~と。言葉には深い履歴があったりする。時代の肖像のようだ。時代の衣をまとわされたり意味合いを変化させられたり。それだけに、”言葉”を生業にしている者として、その言葉の本来の姿だけはしっかりと見極められるようにしておこうと思う。ローカライズ(翻訳)を通して、1つ1つの言葉から学ぶことは多い。

『見える化』

「見える化」という言葉が、以前にも増して流行っている。昨今の世界経済の落ち込みによる企業の業績低迷が影響しているのだろうか。この「見える化」という言葉だが、英語にはピタッとくる単語がない。

一つの英単語で表現せざるを得ないとすれば、Visulaization(可視化)なのだろうが、”Mieruka”として説明を付けた方が正確に意味を伝えられるのかもしれない。何がなんでも1単語で表現したいというのであれば、Transparency(透明性)がいい。つまり、透明性を高めることで問題を見つけ、その問題を誰もが理解できるように明確にしていくことが可能となるからだ。とは言ってみたものの、そもそも日本語として「見える化」の定義が社会全般に認知されているのだろうか。

「見える化」とは、文字どおり”見えないものを見えるようにする”ということなのだが、「見える化」が万能薬のように扱われてはいけない。企業においては、問題を「見える化」さえすれば企業が自動的に強くなるというわけではないはずだ。

「見える化」は、単に手段であり目的であってはならない。問題を「見える化」するだけでは、野次馬を増やすだけの結果を招きかねない。大切なのは、問題を解決していこうとする社員の強い意識である。現場の意識を高めることが企業を強化することに繋がる。堂々巡りのような言い方をすれば、その意識を高める手段の一つが「見える化」となる。極論すれば、意識がない現場で「見える化」に先走ってはならない

IT関連ドキュメントの翻訳をしていると、イノベーション(革新)という言葉を見かけない日はない。技術、概念、仕組み、サービスといったものが業界に革新を起こし続けているのは確かだ。が、イノベーションをもたらすのは、実は社員の意識、現場のパワーだということを忘れてはいないだろうか。

先日、そんな警鐘を鳴らすドキュメントと出会った。企業の管理者層に対する啓蒙資料のようなものだったが、そのドキュメントを作成した企業は、その啓蒙が成功すれば、確実に業績を回復させ、さらに発展し、より多くの人から”選ばれる企業”となっていくだろうと思った。

日々之精進(Days diligence)

ローカライザーとして常に頭に置いている言葉は”信頼”。データの持つ可能性と危険性を日々感じているからだ。

世界のトップ企業のローカライズプロジェクトに関わっていると、時代のトレンドが見えてくる。トレンドのキーワードの一つは「ビッグデータ」。

データ爆発(データの爆発的な増大)へ対応するITインフラの構築、仮想化環境の実現、迅速なディザスタリカバリ、クラウドサービスの提供、モビリティの強化、脅威への備え、ビジネス継続計画の策定、環境対策など、企業は次々と生まれるさまざまな課題への対応や新たな市場の創出へ向けたチャレンジを続けている。そこには、課題をビジネスチャンスへと転換させていく弛まない挑戦が見える。

秒単位で想像を遥かに超える大量のデータが生成され続けているIT社会。モバイル端末の爆発的な普及は、ソーシャルメディア市場を驚異的に拡大させ続けている。企業が提供する無数のネットサービスによって、個人の動向や嗜好までも把握できる詳細な情報の取得と蓄積が進み、市場のトレンドを十分に分析し得る”価値の高い情報”となって次世代の幕開けを待っている。

まさに、新たなビジネスの創出に向けた情報価値が生み出され続けている。IT社会では、その価値をさらに高め、さらに多角的に活用し得る技術の開発も進んでいる。留まることのない流れの波ように、いや、周りのすべてを飲み込み急激に拡大し続ける銀河のように、生みだされた新たな価値はループのように連鎖され、新しい社会トレンドの創出をも予感させている。

予想を超える展開を見せるであろう”ビックデータ時代”の到来で、わたしたちは何をたぐり寄せようとしているのか。日常の風景をも一変させ、さらなる新時代の幕開けをも見通させるデジタルメディアの市場への浸透は、無限の可能性を秘めたビッグデータをさらにビッグへと拡大させている。

無機質なデータの巨大な集まりは、”お客様の顔の見える”有機的な情報、計測不能なほどの高い価値情報へと変貌し、新たなビジネスを生み出そうとしている。もう既に、”ビッグデータ時代”は”ビックデータビジネス時代”へと移行を始めている。

時代の先端をキャッチアップし、お客様のニーズに全力でお応えすべくローカライズ業界のフロントランナーとしてやるべきことは、恐れを忘れず恐れることなく、ひたすらに”日々之精進”だろう。社会への貢献を旨とし”信頼”を胸に。