倍速視聴について

クライアントのポータルに部分的にアクセスできる権利を持っているため、1年に1度セキュリティや行動規範に対するトレーニングを受ける必要がある。コンテンツは動画やテキストで構成され、内容的にはよくできていると思うのだが、今年受けて驚いたのは、ナレーションのデフォルトで設定されている速さが、私の感覚でほぼ1.5倍速くらいの速さになっていることだった。0.75倍にしたら普通くらい。

つい先日、NHKの朝の番組で動画の倍速視聴が取り上げられていた。動画や映画の視聴量を増やすために、常に倍速で観ているという人が思ったより多いことに驚いた。
(参考:https://www.nhk.jp/p/asaichi/ts/KV93JMQRY8/episode/te/M6J5RLZX34/)

動画を倍速で観ると、身体への負荷は大きいらしい。頭が興奮状態になり、寝る前にはお勧めできないそうだ。また情緒や感情が十分に発達しきっていない子供にも悪影響があるらしい。
歌のイントロもここ10年でかなり短くなったそうだ。つまりみんな
「忙しくてじっくり聞いてられないよー!」
ということらしい。

私は、個人的にはストーリーを追う映画よりもゆったりと情景や感情を映し出す映画が好きだ。ヴィスコンティの「山猫」はマイベストだが、この映画ではほぼセリフのない舞踏会の場面が延々と続く。でもそれをゆっくり観ることで、その世界にどっぷりと浸ることができる。これを倍速で観たら、情緒も何もないよなーと思ってしまう。

オンラインでの授業を受けている娘もよく倍速視聴をしている。まったりとしてつまらないんだもん!という。
オンライン授業ならそういうこともあるかもなーと思う。

結局、そのトレーニングはデフォルトの速さ(私感覚で1.5倍)で受けた。

2時間かかって、すごく疲れた。

Lord of the Ring(指輪物語)

子供の頃、覚えるほど読んだ本をのちに原文で読めるようになって、その印象が、感動が、全く変わらないのは「良き」翻訳であるのは間違いない。そしてその翻訳を担当された翻訳者さんには深い尊敬の念を覚える。C.S.ルイスの『ナルニア国物語』を訳された瀬田貞二さん、エーリッヒ・ケストナーの『ふたりのロッテ』を訳された高橋健二さんは私にとってそんな翻訳者さんである。ナルニア国は私の知る限り、このあと、訳本がでていないのだから、本当に素晴らしい。産業翻訳という違う分野とはいえ、同じ翻訳業界に身を置くからには、あやかりたい…。
パーソナルコンピューターなどない時代。用語や長音の統一はどうやってやったんだろう。Tradosもないしなあ。下訳をやった方がいたのか、全部ご自身でされたのか、編集者がされたのか、ご苦労話などお聞きしたいが、今はもうこの世にいらっしゃらない。

『Lord of the Ring(指輪物語)』の新翻訳版全6巻(6864円)をKindle版で購入した。翻訳を担当されたのはナルニア国物語を訳された瀬田貞二さんと田中明子さん。共訳ということだが、既に瀬田さんはこの世におられず、田中さんは94歳でこの新版の発売を待たずに昨年亡くなられた。さぞ無念だったことと思う。
読んでみると、新訳とはいえ、まだ言葉遣いはかなり古い。
ただ先日、子供の頃(今も)、指輪物語のファンだったという友人と話していて、指輪物語には現代語よりも少し古い文体の方が合うんだよ、と言われ、確かに、とも思った。何もかもが新しければいいというものではない。ただ、若い世代に訴えるには、本では難しいのかもしれない。

映像ではどうか。
お正月休みにLord of the Ring(指輪物語)の映画のエピソードを一気に観た。総時間9時間超。オーランド・ブルームか、ヴィーゴ・モーテンセンか、娘と意見を戦わせ(娘はオーランド派)、その世界にどっぷり浸った。娘は大学でTolkienの講義を取っているそうである。何となくほっとした。
その話を同世代のアメリカ人の友人にしたら、”I would pick Viggo Mortensen over Orlando Bloom anytime. ” と返事が来た。世代なのか。

日本語の翻訳単位の最後にある半角スペースの保持

Tradosのエディターで日本語の翻訳単位の最後に半角スペースがある場合、訳文生成やExportによってこのスペースがなくなってしまうことはあまり知られていないようです。

たとえば原文ファイル (word) に以下のようにコロンの後に半角スペースが入っている場合:

Tradosにファイルを入れると、以下のように半角スペースは見えなくなります。

これは、表示を

にしていた場合です。これをすべてのコンテンツを表示

にすると

それぞれの翻訳単位の後にスペースが非表示で存在することが分かります。

日本語でコロンを半角にして、その後に半角スペースを入れるスタイルの場合(Microsoftもこのスタイル)、日本語で訳すときにどう処理すればいいか。
単純に考えれば、スペースは非表示で残っているんだから、何もしなくてもいいのでは?と思いますよね。つまりAll Contents表示で

と処理する。ところが、これで訳文を生成(またはExport)すると、以下のように半角コロンの後のスペース(非表示部にあるスペース)は消えてしまうんです。

これについては、Trados2007の時代から翻訳単位の最後に入れた半角スペースは消える、と公式にSDLさん自身が認めていらっしゃいます。

SDL Trados Studio 2015 SR2で

*****************
Enhancements to processing white spaces when using Japanese as a target language. As a general rule and as before, a space at the end of the segment is removed. However, a space is added or kept after the following characters: single-byte colon, semi-colon, question mark or exclamation mark. Studio makes sure that the space between the segments is kept after these characters.
セグメントの末尾のスペースはこれまで通り削除されるが、半角コロン、セミコロン、疑問符、感嘆符が末尾にある場合は、1つスペースが追加/保持される。
*****************
ということなのですが、実際、プロジェクトを運用していく上では、以前と変わらず特別な処理が必要です。

そこで弊社では長年、このような場合は翻訳者様にお願いして末尾にスペースを入れて「●●」を追加するという処理をしてきました。つまり、
英語:

日本語:

でもこうすると非表示の半角スペースがあるのだから、●●のあとにスペースが残って生成後に●●を取った後はスペースが2つ重なりそうですよね。でも生成してみると以下のとおり、●●の後にはスペースは入っていません。

生成後のファイルで「●●」だけを削除すればOKです。
ではスペースを1つ入れて●●を入れなければどうなるか。つまり、
英語:

日本語:

です。生成してみると以下のとおり、スペースが1つちゃんと入っています。

これでよくない?って思われるかもしれませんが、実はこのスペース、TMでは保持されないんです。この翻訳単位を登録したTMをTMX形式でExportすると、スペースが登録されていません。

●●を付けたほうはスペースも登録されています。

ということで、やはり正解は
英語:

日本語:

です。

ちなみに、同じファイルに更新があった場合、Perfect Matchをかけると、末尾のスペースは以下のように保持されます。

でもTMには登録されていませんので、別の場所で100%マッチとなったところは、
TMから取得するとスペースが取れてしまいます。

TMに記号が入っているのを嫌がられるお客様もいらっしゃるのですが、このような事情によるものですので、ご理解いただければ幸いです。