ウィジェットという用語も最近は聞き慣れてきたが、若いころ(20代の中頃までは)は聞いたことがなかった。酒飲みのわたしが、”ウィジェット”と聞いて頭に浮かぶのは、ギネスビール(あの黒ビール)缶の中に入っている”あのコロコロ”と鳴るやつだ。
ドラフトギネス缶を振ったことのある人なら、コロコロという音に”缶の中に何か入っているのだろうか”と気になったに違いない。好奇心にまかせ、飲み終わった後に缶をペンチで切り開いた人もいるだろう。”何かわかんないけどプラスチック製のような白い丸いボール”が入っているのを見て、”これが入っているから泡がクリーミーになるんだ~”と、これまたよくわかんないけど納得したのでは。あの白い丸いやつのことを”フローティングウィジェット”と呼ぶが、英語では何か名前はわからないけど、小さな装置のようなパーツみたいなものをウィジェットとかガジェットとか言う。
ガジェットという単語は昔から日常で普通に使われているが、近年は電子的なデバイスを指したりもする。ウィジェットもガジェットも”シンプルで便利なアプリ”の意味で使われたり、あるいはアプリへのアクセスを意味する簡単なプログラミングを指したりもする。ガジェットは特に、GUI(グラフィカルユーザーインターフェース)の要素が強い小さなプログラムと言ったところだ。
最近はあまり聞かなくなったブログパーツはウィジェットである。ウィジェットとガジェットの違いを、その所有性の有無で問うケースもあるが、一般のユーザーにとってはそんなことは関係なく、”便利なミニアプリ”であり、”あれば便利なアクセサリーソフト”である。どちらも、ちょっとした知識があれば比較的簡単に作成できるが、その必要性を感じないほどに、さまざまなウィジェットやガジェットがWeb上にも溢れている。例えば、カレンダー、時計、メモ帳、地図、最新ニュースの表示など、例を挙げればキリがないほどだ。。
スマホが流行っている中、ウィジェットもガジェットも、その地位を確立したと言える。ウィジェットは、わたしが大人になってから生まれた言葉なのだが、ガジェットなら子供のころから日常で良く使っていた単語でもある。何か面白いちっちゃなものがあると”ガジェット””ガジェット”と呼んで遊んでいた。が、物心ついたときには、人類最初の原子爆弾のコードネームに用いられたと聞かされた。その後、広島と長崎の原子爆弾が”リトルボーイ”と”ファットマン”というコードネームであることも教わった。
いつも感じることがある。言葉は生きものだな~と。言葉には深い履歴があったりする。時代の肖像のようだ。時代の衣をまとわされたり意味合いを変化させられたり。それだけに、”言葉”を生業にしている者として、その言葉の本来の姿だけはしっかりと見極められるようにしておこうと思う。ローカライズ(翻訳)を通して、1つ1つの言葉から学ぶことは多い。