データ保管(バックアップ)の際に、重複しているデータを検出して除く技術なのだが、いろいろな訳語が使われている。ローカライザーとしては、煩わしいことだ。どの訳語に統一されていくのかは、市場に任せるしかないのだろう。
訳語が複数存在する理由は、重複を”(…)する場所とタイミング(方式)”に起因している。その方式が、おおよそ3とおりある。先ず、バックアップの際にサーバ側で重複を検出して”(…)する方式”。次に、サーバーからストレージへの転送過程で”(…)する方式”。そして、転送先のストレージ内で”(…)する方式”である。つまり、それぞれのメーカーが採用した”(…)する方式”によって、除外、除去、排除といったニュアンスの異なる用語が使われだしたわけだ。また、バックアップデータの重複化を避ける意味で”非重複化”と言いきってしまうのも頷ける。漢字表記をやめて、カタカナ表記にしてしまおうと考えるのも、また頷ける。
Vulnerability(脆弱性)
この単語を誤訳する翻訳者はいないだろうが、Threat(脅威)、Security hole(セキュリティーホール)、Risk(リスク)などの用語が含まれる文章などに出会ったときに、各用語の意味を正確に理解していないと訳文が組み立てられなくなったりする。脆弱性とは、脅威を誘引してしまうセキュリティ上の欠陥や弱点のことで、システム上の問題点以外にも人間の振る舞いによる脆弱性(人為的脆弱性)や自然災害などに対する脆弱性などもあり、その要因は多岐にわたる。セキュリティホールは具体的な欠陥や不具合のことで、脆弱性とは完全に同義ではないので、文脈を把握して正確に訳す必要がある。
ローカライザーとして毎日のように見慣れているこの用語に違和感はないのだが、この訳語を見るたびに”わかりやすい表現”とはどういったものかについて考えたりする。何と読むのか、どういう意味なのか、戸惑う人もいるのでは…と。
Severity(重大度、…)
翻訳者なら、訳を間違えることはないだろう。医学系だと”重症度”とも訳す。分野や文脈によっては”重要度”と訳す場合もあるが、やはり重大度が意味的には近い。重要度を意味する英語には”importance”、”significance”、”priority”などがあるが、きつい(深刻とか重大な問題といった)イメージは浮かばない。つまり、日本語の”重大度”とはニュアンスが完全に一致しているとは言い難い。重大度は深刻度に近い。原発事故の英語のニュースでは、深刻度として”severity level”とか”severity rating”という表現が出てくる。深刻度は”seriousness”を用いて表現する場合も多いが、どちらも重要度とはニュアンスが異なる。深刻度の意味として”vulnerability”も考えられるが、ITの世界ではこれもまた意味合いが違う。微妙なニュアンスをうまく伝えるにも、やはり文脈の把握が大切だろう。