Engagement(エンゲージメント)

Engagementは、このコラムでも再登場である。この単語を訳すときには、特に注意が必要なだけに再度コメントしておこう。

Engagementを安易に”関係”と訳す翻訳者がいたりする。文脈によっては差し支えない場合もあるが、その定義が明確になされていないと、意味の通じない支離滅裂な訳文になったりする。特に、ITやマーケティング分野のドキュメントに出てくるengagementを訳す場合には注意が必要だ。プロの翻訳者なら、この言葉の持つ概念を十分に理解しておきたい。

辞書を調べても、どうも概念が今一つ掴めないという翻訳者のために、敢えて日本語的に一言に訳して説明するとしたら、「双方(互い)の成長に貢献し合う関係」「相互貢献的な関係性」とでもなるだろう。単なる、”関係”(relationship)を意味しているのではない、ということは理解できるだろう。

RORO index(RORO指数、Risk On/Risk Off指数)

RORO indexを”ロロ指数”といきなり訳してしまう翻訳者がいたりする。内容を理解した上でのことなら100歩譲ってもいいが、せめて”リスクオン・リスクオフ指数”として欲しい。金融工学におけるリスクオンとリスクオフの意味を理解しておくことが大切だろう。

ただし、リスクオンとリスクオフを理解したからといって、リスクオンの時はRORO指数が高くなりリスクオフでは低い値を示すものだと早合点してはいけない。

ちょっと難しくなるが、RORO指数は、関連性のないような金融資産のマーケットが同時に動く確率を指数化したもで、単にリスクオン・オフの高低を示したものではない。

common mode rejection ratio(コモン・モード除去比)

オシロスコープのプローブに関する翻訳で、common mode rejection ratio(コモン・モード除去比)という言葉がよく出てくる(例えば、より良いオシロスコープ・プロービングのための8つのヒントのp8)。コモン・モード除去比は、common mode rejection ratioの頭文字をとってCMRRと略されることもある。

差動増幅器やデジタル・マルチメータやオシロスコープの2つの入力(+と-、HiとLo)に共通に加わる(同じ位相で重畳される)ノイズは、コモン・モード・ノイズと呼ばれる。このノイズに起因する出力信号の誤差がどの程度小さいか(どの程度除去できるか)を表す指標がコモン・モード除去比である。コモン・モード・ノイズ電圧をEn、コモン・モード・ノイズに起因する出力(測定)電圧誤差を⊿Eoutとすると、CMRR = 20 log(En/⊿Eout)で表され、CMRRが大きほどコモン・モード・ノイズによる影響を受けにくい。また、ノイズが同じ位相で重畳されることから、コモン・モード除去比は同相信号除去比と呼ばれることもある。

差動増幅器やデジタル・マルチメータやオシロスコープの2つの入力(+と-、HiとLo)に対して逆向きに流れるノイズは、ノーマル・モード・ノイズと呼ばれる。伝送したい信号もノーマル・モードなので、一般にこのノイズの除去は困難である。

コモン・モード・ノイズとノーマル・モード・ノイズについては、以下を参照。

慶應義塾大学 環境共生・安全システムデザイン教育研究センターの牧野泰才氏のページノイズと計装アンプ

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