日本からの出国と入国事情 2022年8月

2022年9月より悪名高い日本の帰国前PCR検査陰性証明提出が撤廃されているが、ワクチン接種3回未満の人は、いまだ(2023年2月現在)入国の際にPCR検査の陰性証明の提出が必要だということは知らなかった!

筆者は2022年7月末にドイツに渡航し、8月10日に帰国している。
もう過去の話になってしまったが、今後どう変わるかを見ていくためにこの時のことを忘備録として書いておこうと思う。

出国は2022年7月29日。行先はドイツ、フランクフルト空港。
航空券予約時は、ドイツは「ブルー」国。つまり日本からの旅行者は指定ワクチンを2回接種していれば問題なし、という扱いだった。ワクチン接種証明はスマホのアプリで海外用のものを発行する。マイナンバーカードの読み込みが必要。

チェックイン時にカウンターでこの証明書を提示するだけだった。

ただ、この時点では、帰国時に日本政府所定のPCR陰性証明の提示が必要だった。日本の基準はかなり厳しく、
– 鼻ぬぐい法と口の中の唾液の両方の検査を実施
– 日本政府所定フォームへの記載が必要
PCR検査は出国前72時間から48時間前に受ける必要がある。

日本所定フォームへの記載というオプションを付けてくれる検査期間はドイツの主要都市にはほとんどあるのだが、価格が高い!
通常の検査は49ユーロなのに、日本独自フォーマットでの証明を、24時間以内に受け取る場合、110ユーロかかる。
でもこれがなければ入国できないのだから仕方がない。
出国の2日前にハンブルク空港の横にある建物の中で検査を受けた。すごーく長い綿棒を見せられて、おびえる….

結果は24時間ぴったりに来た。陰性。PDFに結果が記載されている。滞在先の友人とハイタッチ!川べりで最後のランチを楽しんだ。

帰りの空港でのチェックイン、飛行機への搭乗口でこの証明書(PDFフォーマットの電子ファイル)を提示。
さらに入国前に、この証明書を接種証明書、入国後2週間の滞在先の住所とともに「MYSOS」というアプリに登録する。数分の審査時間があり、ブルーの画面が表示される。
このブルーの画面をまるで水戸黄門の印籠のようにかざしながら飛行機を降り、入国審査へ向かう。
これがあれば、かなりのショートカットがある。ゲートを出てから荷物のバゲッジクレームまであっという間。おまけに私のスーツケースはすぐ出てきて、とても楽だった。

次回はどうなることやら。

倍速視聴について

クライアントのポータルに部分的にアクセスできる権利を持っているため、1年に1度セキュリティや行動規範に対するトレーニングを受ける必要がある。コンテンツは動画やテキストで構成され、内容的にはよくできていると思うのだが、今年受けて驚いたのは、ナレーションのデフォルトで設定されている速さが、私の感覚でほぼ1.5倍速くらいの速さになっていることだった。0.75倍にしたら普通くらい。

つい先日、NHKの朝の番組で動画の倍速視聴が取り上げられていた。動画や映画の視聴量を増やすために、常に倍速で観ているという人が思ったより多いことに驚いた。
(参考:https://www.nhk.jp/p/asaichi/ts/KV93JMQRY8/episode/te/M6J5RLZX34/)

動画を倍速で観ると、身体への負荷は大きいらしい。頭が興奮状態になり、寝る前にはお勧めできないそうだ。また情緒や感情が十分に発達しきっていない子供にも悪影響があるらしい。
歌のイントロもここ10年でかなり短くなったそうだ。つまりみんな
「忙しくてじっくり聞いてられないよー!」
ということらしい。

私は、個人的にはストーリーを追う映画よりもゆったりと情景や感情を映し出す映画が好きだ。ヴィスコンティの「山猫」はマイベストだが、この映画ではほぼセリフのない舞踏会の場面が延々と続く。でもそれをゆっくり観ることで、その世界にどっぷりと浸ることができる。これを倍速で観たら、情緒も何もないよなーと思ってしまう。

オンラインでの授業を受けている娘もよく倍速視聴をしている。まったりとしてつまらないんだもん!という。
オンライン授業ならそういうこともあるかもなーと思う。

結局、そのトレーニングはデフォルトの速さ(私感覚で1.5倍)で受けた。

2時間かかって、すごく疲れた。

Lord of the Ring(指輪物語)

子供の頃、覚えるほど読んだ本をのちに原文で読めるようになって、その印象が、感動が、全く変わらないのは「良き」翻訳であるのは間違いない。そしてその翻訳を担当された翻訳者さんには深い尊敬の念を覚える。C.S.ルイスの『ナルニア国物語』を訳された瀬田貞二さん、エーリッヒ・ケストナーの『ふたりのロッテ』を訳された高橋健二さんは私にとってそんな翻訳者さんである。ナルニア国は私の知る限り、このあと、訳本がでていないのだから、本当に素晴らしい。産業翻訳という違う分野とはいえ、同じ翻訳業界に身を置くからには、あやかりたい…。
パーソナルコンピューターなどない時代。用語や長音の統一はどうやってやったんだろう。Tradosもないしなあ。下訳をやった方がいたのか、全部ご自身でされたのか、編集者がされたのか、ご苦労話などお聞きしたいが、今はもうこの世にいらっしゃらない。

『Lord of the Ring(指輪物語)』の新翻訳版全6巻(6864円)をKindle版で購入した。翻訳を担当されたのはナルニア国物語を訳された瀬田貞二さんと田中明子さん。共訳ということだが、既に瀬田さんはこの世におられず、田中さんは94歳でこの新版の発売を待たずに昨年亡くなられた。さぞ無念だったことと思う。
読んでみると、新訳とはいえ、まだ言葉遣いはかなり古い。
ただ先日、子供の頃(今も)、指輪物語のファンだったという友人と話していて、指輪物語には現代語よりも少し古い文体の方が合うんだよ、と言われ、確かに、とも思った。何もかもが新しければいいというものではない。ただ、若い世代に訴えるには、本では難しいのかもしれない。

映像ではどうか。
お正月休みにLord of the Ring(指輪物語)の映画のエピソードを一気に観た。総時間9時間超。オーランド・ブルームか、ヴィーゴ・モーテンセンか、娘と意見を戦わせ(娘はオーランド派)、その世界にどっぷり浸った。娘は大学でTolkienの講義を取っているそうである。何となくほっとした。
その話を同世代のアメリカ人の友人にしたら、”I would pick Viggo Mortensen over Orlando Bloom anytime. ” と返事が来た。世代なのか。