Lord of the Ring(指輪物語)

子供の頃、覚えるほど読んだ本をのちに原文で読めるようになって、その印象が、感動が、全く変わらないのは「良き」翻訳であるのは間違いない。そしてその翻訳を担当された翻訳者さんには深い尊敬の念を覚える。C.S.ルイスの『ナルニア国物語』を訳された瀬田貞二さん、エーリッヒ・ケストナーの『ふたりのロッテ』を訳された高橋健二さんは私にとってそんな翻訳者さんである。ナルニア国は私の知る限り、このあと、訳本がでていないのだから、本当に素晴らしい。産業翻訳という違う分野とはいえ、同じ翻訳業界に身を置くからには、あやかりたい…。
パーソナルコンピューターなどない時代。用語や長音の統一はどうやってやったんだろう。Tradosもないしなあ。下訳をやった方がいたのか、全部ご自身でされたのか、編集者がされたのか、ご苦労話などお聞きしたいが、今はもうこの世にいらっしゃらない。

『Lord of the Ring(指輪物語)』の新翻訳版全6巻(6864円)をKindle版で購入した。翻訳を担当されたのはナルニア国物語を訳された瀬田貞二さんと田中明子さん。共訳ということだが、既に瀬田さんはこの世におられず、田中さんは94歳でこの新版の発売を待たずに昨年亡くなられた。さぞ無念だったことと思う。
読んでみると、新訳とはいえ、まだ言葉遣いはかなり古い。
ただ先日、子供の頃(今も)、指輪物語のファンだったという友人と話していて、指輪物語には現代語よりも少し古い文体の方が合うんだよ、と言われ、確かに、とも思った。何もかもが新しければいいというものではない。ただ、若い世代に訴えるには、本では難しいのかもしれない。

映像ではどうか。
お正月休みにLord of the Ring(指輪物語)の映画のエピソードを一気に観た。総時間9時間超。オーランド・ブルームか、ヴィーゴ・モーテンセンか、娘と意見を戦わせ(娘はオーランド派)、その世界にどっぷり浸った。娘は大学でTolkienの講義を取っているそうである。何となくほっとした。
その話を同世代のアメリカ人の友人にしたら、”I would pick Viggo Mortensen over Orlando Bloom anytime. ” と返事が来た。世代なのか。

眼から耳へ

Jane Austen(ジェイン・オースティン)の全7作品セットが電子書籍で100円!だった。

おまけにオーディオブックがやはり全作品セットで300円!

あまりの安さにびっくり。即、両方購入した。
Jane Austenは、「Pride and Prejudice(自負と偏見)」「Emma(エマ)」「Sense and Sensibility(分別と多感)」などを書いた18世紀のイギリスの作家。今でもファン、特に全世界的に女性ファンが多い。じっと耐えて最後はハッピーエンドというパターンが乙女心をくすぐる。「周りに流されずじっと耐えて、自分をしっかり持っていればいいことあるぞー」って。

さて、オーディオブック。
聞いてみると朗読の質もいいし、聞き流しているととても落ち着く。退屈しないし、彼女の小説には、今に通じる不変の真理があり、なるほど~と思うこともある。聞き取れなければ100円の電子書籍で検索して確認する。こっちはスキャンしたとみえて隣の単語がくっついていることがあるが、全然OK。これだけで軽く1年くらい楽しめるよね。

平成28年に著作権法の改訂があり、外国人の著作権保護期間も70年に延長されたそうだ。(https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/hokaisei/kantaiheiyo_chosakuken/1411890.html

Janeが亡くなったのは1817年だから十分著作権切れ。すでにネットではJaneのファンが「自身で翻訳しています!」というのも見かけることがある。

100円は著作権の切れた作品の電子書籍化にかかる費用として、Audio Bookの300円はどうやって実現したんだろう??全録音総時間は優に50時間を超えており、その朗読、録音の費用は300円でまかなえるのかなあ。ちょっと不思議。

耳読書と言えば、勝間和代さんが日本の書籍をモバイルデバイスの音声朗読で読んで(聞いて)いる、という話をされていて、私も試してみた。悪くない。iPhoneの場合、読み上げコンテンツの声を3種類から選択できる。私は一番なじみがよかった「Kyoko」で聞いていた。

もちろん、人が読むのに比べてロボット的な不自然な感じがするのは仕方がないが、家事をしながら、通勤しながら、耳で本が読めるのは嬉しかった。結局、Kindle Unlimited無料お試し期間に10冊くらいこの方法で読んだ。(Kindle Unlimitedは無料期間終了で解約。ごめんなさい、Amazonさん)

娘が大学受験のときに聞いていたのは山川詳説世界史(2,750円)。こちらは参考書にアナウンサーが朗読した音声CDがついている。iPod Touch(なつかしいなあ)に入れて聞き流していると何となく頭に入ってくるから不思議。私も大いに楽しませてもらった。それにしてもプロの朗読はいいなあ。

毎日眼が疲れる。

会社ではPCの画面を見て仕事をし、そこを離れると今度はモバイルデバイスに移行。寝る前はKindleで読書、朝から晩まで眼を酷使する生活で、ドライアイが直らない。目薬は必携。4分の1くらいを眼から耳に切り替えることができれば、少しは負担が減るのかも。

新聞もデジタル版をサブスクリプションしているが、これを耳に切り替えようと思ったら、新聞の読み上げは別途費用がかかるらしい。読み上げ、というよりはデジタル版「読む」「聴く」を選択するという感じなんだろうね。残念。

着付けとマインドフルネス

2年ほど前から着付けを習っている。自宅近くでのマンツーマンの着付け教室で、月2回程度細々と続けてきた。着物が好きだった母が残した着物と帯を無駄にするのが嫌で始めたのだが、やっているうちにこれは「マインドフルネス」の訓練になるとふと気づいた。

「マインドフルネス」とはWikiをみると
「現在において起こっている経験に注意を向ける心理的な過程」
と定義されている。つまり「今」にフォーカスをあてる訓練をする、ということである。
「マルチタスク」が多い。
昔からテレビを観ながらご飯を食べる、ラジオを聞きながら勉強をする、といった程度のマルチタスクというか、マルチアクションはあったが、今はそのツールやコンテンツが高度化していて、続けていると疲弊してしまう。
You Tubeを見ながらiPadで絵を描き、次々に更新されるLINEをチェックしている娘はすごい…..
私にはとてもできない。

ここまでではなくても、仕事柄、複数の仕事を並列で行う必要がある。昔は複数のプロジェクトを並行して動かすことは特に問題なく出来ていたが、最近なかなか厳しくなってきた。年のせいなのか、よく言われるマルチタスクのやりすぎによるダメージがきたのか….
何か失敗をすると引きずり、次のタスクに影響を与える。
たまった仕事が同じくらいのプライオリティを持つときに焦りが出て、かえって仕事が進まず、結果として生産性が落ちてしまう、などネガティブな結果になることが多い。

「今」やっていることに集中し、他のことは考えない

これが出来るようになれば、メンタルを壊すことなく、効率の良い仕事が出来る。らしい。

瞑想もこの訓練の一つなのだが、私はどうもこれが苦手で、通っているヨガのスタジオで瞑想の時間が来るとどうしても「このあと何しよう」「あーあれするの忘れた」など別なことを考えてしまう。「頭に浮かんだことはそのまま置いておいて….」などとインストラクターに言われるが「置いておく」という感覚がまだつかめない。

着付けがマインドフルネスの訓練になると気づいたのは最近である。着物を着るには何十もの工程があり、そのひとつひとつにそれぞれ注意点がある。そのどれか一つが上手くいかなくても仕上がりが悪い。
補正のタオルを入れる位置がちょっとずれたり、紐の位置がちょっと高かったり、または低かったり、結び方がきつすぎたり、ゆるかったり、布の引き方が足りなかったり、引きすぎたり、すべての工程で先生に注意されたことを想い出し、手に、身体にしみ込ませていく。当然、口数も少なくなる。じっと考えながら衣擦れの音だけが響く。ん?と思うとすかさず先生から注意が飛ぶ。

着終わって鏡で最後の調整をすると、あっという間に30分が経っていて、その時に初めて自分がものすごく集中していたことに気づく。そしてその間、一切デジタルデバイスは触っていない。なかなか貴重な時間なのである。

1時間半のレッスンが終わった後は、頭がとてもすっきりしてすがすがしい。

私のマインドフルネスは着付け。でも誰にでもそういうものはあると思う。
何か「今」に集中することを一日の中で1分でも見つけることができれば、かなり違うらしい。

そう書いてある雑誌Presidentの特集『最高の瞑想』を読みながら、録画した番組の編集をして、AppleのMindfulnessアプリを流している私はまだまだだ。