common mode rejection ratio(コモン・モード除去比)

オシロスコープのプローブに関する翻訳で、common mode rejection ratio(コモン・モード除去比)という言葉がよく出てくる(例えば、より良いオシロスコープ・プロービングのための8つのヒントのp8)。コモン・モード除去比は、common mode rejection ratioの頭文字をとってCMRRと略されることもある。

差動増幅器やデジタル・マルチメータやオシロスコープの2つの入力(+と-、HiとLo)に共通に加わる(同じ位相で重畳される)ノイズは、コモン・モード・ノイズと呼ばれる。このノイズに起因する出力信号の誤差がどの程度小さいか(どの程度除去できるか)を表す指標がコモン・モード除去比である。コモン・モード・ノイズ電圧をEn、コモン・モード・ノイズに起因する出力(測定)電圧誤差を⊿Eoutとすると、CMRR = 20 log(En/⊿Eout)で表され、CMRRが大きほどコモン・モード・ノイズによる影響を受けにくい。また、ノイズが同じ位相で重畳されることから、コモン・モード除去比は同相信号除去比と呼ばれることもある。

差動増幅器やデジタル・マルチメータやオシロスコープの2つの入力(+と-、HiとLo)に対して逆向きに流れるノイズは、ノーマル・モード・ノイズと呼ばれる。伝送したい信号もノーマル・モードなので、一般にこのノイズの除去は困難である。

コモン・モード・ノイズとノーマル・モード・ノイズについては、以下を参照。

慶應義塾大学 環境共生・安全システムデザイン教育研究センターの牧野泰才氏のページノイズと計装アンプ

横河メータ&インスツルメンツのホームページ > 技術情報 > 計測豆知識・技術レポート測定器の正しい使い方入門 ディジタル・マルチメータの使い方の測定法と使用上の注意

true rms(真の実効値)

AC電流/電圧測定に関する翻訳で、true rms(真の実効値)という言葉がよく出てくる(例えば、Keysight 3458Aマルチメータのp1)。

交流(AC)の瞬時電圧値は、時間とともに変化している。例えば、一般家庭で使用されているAC電源コンセントの瞬時電圧は、周波数60Hzまたは50Hzで-141Vと+141Vの間を行ったり来たりしている。これを何ボルトですか?と問われると答えに窮するはずだが、100Vであることはご存知のはずだ。これが実効値なのである。すなわち、抵抗体に交流を流したときに抵抗体で発生する熱量(電力消費)が、同じ抵抗体に直流(電圧値は時間に対して一定)を流したときに発生する熱量(電力消費)と等しくなる、直流電圧値が交流の実効値なのである。

AC電圧の実効値を計算で求めるには、

1. ACの瞬時電圧値(Vac(t))で瞬時電力値(Vac(t)^2/R)を表し、これを交流の1サイクル(T秒)に渡って積分(∫(Vac(t)^2/R)dt)する。これは、抵抗RでT秒間に消費される電力である。

2. 上の積分は、瞬時電圧値(Vac(t))の2乗平均((Vac(0)^2+Vac(⊿t)^2+・・・+Vac(n⊿t)^2)/n)/R)Tを計算することと同じである。

3. 2.の値が、実効値Vrms(すなわち、直流電圧Vrms)を抵抗RにT秒間印加したときに抵抗Rで消費される電力(Vrms^2/R)Tに等しいということが、Vrmsの定義なので、実効値Vrms = √((Vac(0)^2+Vac(⊿t)^2+・・・+Vac(n⊿t)^2)/n))となる。

上記の計算のように、2乗(square)したものの平均(mean)を求め、それの平方根(root)をとることから、実効値はrms(root mean square)値とも呼ばれる。

平均値応答型のデジタル・マルチメータでは、交流を整流回路に通して波形のマイナスの部分をプラスに反転し、フィルタに通す(積分する)ことにより平均値を求め、正弦波の波形率(平均値と実効値の比。ピーク値と実効値の比は波高率(クレスト・ファクト)と呼ばれる)、1.11を掛けて実効値を表示している。この方式では、入力信号が正弦波の場合にしか正確な実効値が得られない(正弦波以外の三角波や矩形波、高調波やノイズが重畳された歪みのある正弦波では、波形率は1.11ではないから)。

これに対して、真の実効値型デジタル・マルチメータには、熱電対を用いて入力交流波形と等価な熱起電力(直流電圧)を測定する方式、ダイオードの電圧-電流の2乗特性を利用する方式、交流をサンプリングして上記(1. ~ 3.)の計算で求める方式があり、入力が正弦波に制限されることなく、実効値が得られる。入力値が正弦波に制限されないので、真の実効値型と呼ばれる。

実効値については、以下を参照。

交流の電力

デジタルマルチメータの真の実効値型と平均値応答型の違いは何ですか?

DMMを使用してより良い実効値測定を行うためのヒント

翻訳業務でのOffice 2010/2013 選択すべきは32bit版か? 64bit版か?

MS Officeは2010バージョンから32bit版と64bit版の両方が提供されるようになりました。
そこで翻訳業務に使うPCに話を限定して、どちらをインストールすべきか考えてみたいと思います。

まずは64bit版のメリットから。
何と言っても広大なメモリ領域を扱えるということに尽きます。Excelなどはかなり大きなファイルも扱えるようになり、ハードウェア能力を余すことなく活用出来ます。

これだけならば問題はないのですが、残念ながらデメリットが存在します。
これまでに作成されたサードパーティ製のアドイン、つまりOfficeの機能を拡張するプログラムと互換性がありません。アドインの制作者が64bitに対応したものに作り変えない限り、その機能を利用することができなくなります。

例えば、SDL Trados 2007のWordツールバーなどがこれに当たります。加えてSDLのナレッジベースにおいて、ツールバーを64bit版に対応させる計画はないと表明されています。

こうなると32bit版のメリットは言うまでもなく、既存環境との互換性ということになります。翻訳業務において優先すべきは、広大なメモリ領域よりもアドインの動作です。

よって、インストールの選択は32bit版ということになります。
ちなみに、マイクロソフトでもこれらの事情を考慮して、32bit版のインストールを推奨しています。

ただし、OfficeがプレインストールされたPCを購入した場合、メーカーによっては64bit版を導入していることがあります。その際には、一度64bit版をアンインストール(64bit/32bitの共存はできません)して、32bit版をイントールする必要がありますのでご注意ください。