翻訳プロジェクトにおいて、クライアントのニーズに応じて品質の2極化が進んでいる。
以前からあるPremium品質の翻訳では用語の統一、スタイルの準拠、流暢さ、ターゲット読者を意識した読みやすさなどの項目が高いレベルで要求される。他方、Basic品質の翻訳では誤訳、ユーザーの誤解を招くような翻訳のみがエラーとカウントされる。両者の間にはもちろん受注価格にもかなりのギャップがある。
このように品質を指定して、その品質によって受注価格が変わるプロジェクトはここ4,5年にわたって多くみられるようになった。「品質を可能な限り上げる」ことは、品質の高い翻訳者、校正者をアサインし、時間をかければほぼ達成できる。だが「品質をある段階まで落とす」のは、そのさじ加減が非常に難しい。翻訳の品質評価に数値方式が採用されて久しいが、依然、評価者の主観に左右されるところが多い。
社内工数を調整し、如何にクライアントが求める品質を達成するのか、まだまだ試行錯誤が続く。
ポストエディット(Post Edit)
半年ほど前にあるクライアントからポストエディット(Post Edit)業務についての説明を受けた。これまでもマシントランスレーションが適用されてきたプロジェクトはあったが、あくまでもマッチ率の低い文字列に対し、マシントランスレーションを適用した通常の「翻訳」プロジェクトだった。社内ではポストエディット受注に備え、社内で勉強会を開いたり、進め方について話し合いをしてきたが、当初は「多くの場合、マシントランスレーションは日本語では使えない」というのが共通理解だった。だが、昨今はそうでもないらしい。マシントランスレーションのエンジンはどんどん精査され、適切な長さの文字列では、かなり使えるものが出てくるようになった。
ポストエディットは、同プロジェクトの過去の翻訳テキストをサンプルとして取りだし、ヒューマントランスレーション (人による翻訳) とマシントランスレーション(機械による翻訳)のエラーの数を比べ (Edit Distance Ratio:エディットディスタンスレシオ)、その差がある一定以下の場合にマシントランスレーションが有効であるとみなされ、ポストエディットプロジェクトとして動き始めるらしい。
翻訳済みのデータベースがどんどん蓄積され、TMXとして公開されていくことで、この動きはますます加速すると考えられる。翻訳会社もこの動きを無視することはできない。