翻訳者泣かせの単語でもある。分野によって訳語が異なるからだ。カタカナ表記が安全ではあるが、翻訳者としては最適な訳語を用いたい。そのためには、この単語の意味を理解するしかない。
Preの接頭辞からして、ラテン語のPrimusかPraeあたりが起源なのだろうと想像できる。楽しく解釈すれば、Primusには第一番目という意味もあるので、戦国時代で言うところの”一番槍”がそれにあたると推測できる。つまり、勇敢に先頭に立ち、死のリスクを負いながら敵陣に切り込んで最初に手柄をたてれば、”あっぱれ!”ということで特別に上乗せされた恩賞がもらえたわけだ。従って、一番槍は特別な存在(希少価値)であり、手柄を立てれば、通常の手柄よりも恩賞という価値が付加されたことになる。今でいう付加価値だ。それから派生してきたに違いないと考えれば、賞与、奨励金、割増給、景品類といった訳語が出てくる。逆の立場からすれば、割増金、オプション料金、手数料、掛金…がプレミアムになるといった解釈も可能となる。何れにしても、文脈を読み取ろう。

Availability(可用性)
アベイラビリティとも言う。英語に馴染みのない人にとっては、どちらにしてもピンとこない。稼働率と言ったら、わかるだろうか。IT分野では、決められた条件下におけるシステムや機能などの正常な稼働能力を意味する場合が多い。例えば、システムの稼働能力が優れていれば稼働率も高くなり、費用対効果も良くなる。つまり、可用性が高いということは、システムが壊れにくい、障害が発生しにくい、障害が発生しても復旧が早い、安心して使用できることを意味する。そう言う場合に、ハイアベイラビリティであるとか可用性が高い(高可用性)と言ったりする。企業のミッションクリティカルな基幹システムに求められる能力である。可用性を数値化したものが稼働率となるわけだ。
Social network(ソーシャルネットワーク)
ネットサービスの世界では、Social Networking Serviceのことを指したりするが厳密に訳した方がいい。Social Networking Serviceは略してSNSと言ったりするが、ネットワーク上で会員制のコミュニケーションの場(コミュニティサイト)を提供しているサービスということになる。訳すとしたら、ソーシャルネットワーキングサービス。これを安易に”ソーシャルネットワーク”とすると、後々整合性が保てなくなったりする。また、社会的ネットワークと言う場合は、ネット上だけではなく社会におけるさまざまな繋がりを示唆しているので、”ソーシャル~”と”社会的~”は、うまく使い分けた方がいいだろう。
ソーシャルネットワーキングサービスの代表的なものに、日本だとmixi(ミクシィ)、GREE(グリー)、Mobage(モバゲー)、海外だとFacebook(フェイスブック)、Myspace(マイスペース)などがある。招待制や登録制によって会員を増やすのだが、一般のブログでもコメントやトラックバック機能を付ければ、そのサイトもソーシャルネットワークと言えなくもない。因みに、映画『ソーシャル・ネットワーク』はFacebookの創設者(マーク・ザッカーバーグ)らをドラマ化した2010年の作品。原題の”The Social Network”をそのまま訳したタイトルだが、原作の英語タイトルは『The Accidental Billionaires(偶然の億万長者たち)』。ネット社会の偶然の産物、不慮の幸運ってとこなのかな~。ピッたし!のタイトルかも?