Vulnerability(脆弱性)

この単語を誤訳する翻訳者はいないだろうが、Threat(脅威)、Security hole(セキュリティーホール)、Risk(リスク)などの用語が含まれる文章などに出会ったときに、各用語の意味を正確に理解していないと訳文が組み立てられなくなったりする。脆弱性とは、脅威を誘引してしまうセキュリティ上の欠陥や弱点のことで、システム上の問題点以外にも人間の振る舞いによる脆弱性(人為的脆弱性)や自然災害などに対する脆弱性などもあり、その要因は多岐にわたる。セキュリティホールは具体的な欠陥や不具合のことで、脆弱性とは完全に同義ではないので、文脈を把握して正確に訳す必要がある。
ローカライザーとして毎日のように見慣れているこの用語に違和感はないのだが、この訳語を見るたびに”わかりやすい表現”とはどういったものかについて考えたりする。何と読むのか、どういう意味なのか、戸惑う人もいるのでは…と。

Severity(重大度、…)

翻訳者なら、訳を間違えることはないだろう。医学系だと”重症度”とも訳す。分野や文脈によっては”重要度”と訳す場合もあるが、やはり重大度が意味的には近い。重要度を意味する英語には”importance”、”significance”、”priority”などがあるが、きつい(深刻とか重大な問題といった)イメージは浮かばない。つまり、日本語の”重大度”とはニュアンスが完全に一致しているとは言い難い。重大度は深刻度に近い。原発事故の英語のニュースでは、深刻度として”severity level”とか”severity rating”という表現が出てくる。深刻度は”seriousness”を用いて表現する場合も多いが、どちらも重要度とはニュアンスが異なる。深刻度の意味として”vulnerability”も考えられるが、ITの世界ではこれもまた意味合いが違う。微妙なニュアンスをうまく伝えるにも、やはり文脈の把握が大切だろう。

Secure(セキュリティで保護された、セキュア~)

安全に関するさまざまな表現が可能な便利な用語。ITの世界では、セキュリティ(Security)と同じような使われ方をする。Securityは名詞だが(形容詞的に使われる場合もあるが)、Secureは形容詞であり動詞でもある。辞書的な説明はさておき、分野や文脈によって、その訳し方は幅広く可能だ。システム、データ、ネットワークなどがさまざまな保護機能によって守られている(安全性が確保された)状態だと考えればいい。因みに、セキュリティが強化されたオペレーティングシステムを”セキュアOS”と呼ぶが、英語ではsecure OS(operating system)とはあまり言わない。Security-focused~と言うが、secureに比べて音感的にもスマートな感じがするのは、筆者だけだろうか。