Trados 6.5は偉いのだ!

SWのPropertiesファイルの翻訳の際に、SDL Trados 2007のフィルタを使うとそのままTTXに変換できる。これば便利な反面、いろいろと問題があり、いまだにリソースファイルをRTFに変換し、翻訳箇所をマーキングしてRTFベースで翻訳をしているプロジェクトも多い。

あるプロジェクトで、ソースクライアントのR&Dから送られてきたファイルをRTFにし、マクロをかけて翻訳対象個所のマークアップと改行の変換を行ない、そのあとTTXにして前バージョンのバイリンガルファイルでXtranslationする、という工程がナントWord 2003とTrados6.5の組み合わせでしかできないことがわかった。この結論まで行きつくのに半日。

Trados3.0から使用しているユーザーとして、最近のSDLTradosのバージョンはあまりにもブラックボックス的要素が多いように思う。たとえばSynergyを使用したPerfect match処理(Xtrans)にしても、使用しているマシンのJavaのVersionがあがっているとかからないケースがある。本来、アプリケーションのバージョンが上がれば上がるほど便利になっていくことを期待するのだが、いまだ6.5の方がやっていることが目に見え、どこが悪いかすぐに分かる。

2007のコンポーネントETMAシステムにいたっては「Content Management Systemを使用してTMの管理から自由になる!」というふうになったことがほとんどない。「原文に戻す」機能が使えない、Repetitionの処理ができない、翻訳後アップロードしたバイリンガルから生成されるファイルは2回に1度はうまくターゲットにならない、社内処理して新しく作成したパッケージのログはオリジナルのまま。毎回、サポートとのやりとりに時間を費やす。

IT業界に身を置く以上、アプリケーションのバージョンが上がるのは仕方がない。でもAdobeのCSもSDLもMSのOfficeも多機能ではあっても、ある人には不必要な要素をどんどん取り入れ、本当にやりたいことができなくなっている感が強い。村上春樹の『世界の終りとハードボイルドワンダーランド』に出てくる最先端の脳科学者の家では「後退に結びつくことは禁じられている」ということだが、シンプルにやりたいことをコントロールできることがありがたい場合も多い。

機能が多様化するアプリケーションを開発し、市場に出すのはかまわない。そのマーケットは必ずあるのだろう。でも、あくまでも選択権は欲しい。いったん上げたら元にもどれないのではなく、あるときは最新のバージョンで、あるときは前のバージョンで、ということが可能であってほしい。Trados6.5は本当に使いやすいのだ….
SDL Trados2009を使用したプロジェクトは2年前に購入後1度しか受けていない….この現実を謙虚に見てほしい。
SDLさん、辛口コメントでごめんなさい!

SDL Trados 2007

言わずと知れた、SDL社のCAT(Computer Assisted Translation)ツールです。業界ではデファクトスタンダードの地位を欲しいままにしています。

もしTradosがなければ、弊社には死屍累々の山が築かれるか、あるいは、それ以前に存続すらできないかも知れません。鬼に金棒、侍に日本刀、DTPにIndesign、翻訳にTradosといったところです。

しかし、このTrados、特に2007はまるで生き物のよう。「○○○(機能名)ができない! 昨日まで出来たのに!!」という阿鼻叫喚が社内に響き渡ることがあります。そこで、私の出番。Tradosの治療を始めます。軽症ならばものの数分、重症にいたっては半日以上と、パターンはさまざまです。大概は直しますが、それでもダメなときは再インストールとなります。Tradosのインストール回数なら、日本ランキング10位以内に入るかも知れません。

安定運用メモ

パッチはすべて当てましょう
おかしくなったら、まずregisterを実行
万策尽きたら、アンインストール & 再インストールの手間を惜しまない(サポート契約のある方は、サポートへ)

これらは基本中の基本です。応用編については、また別の機会にしたいと思います。

HP Cloud Compute

弊社では、エンタープライズ向け大規模ソフトウェアのローカライズを行なっています。この一連の作業のなかで、要と言えるのがLinguistic QA (LQA) です。LQAにおいてはソフトウェアを本運用さながらにセットアップし、文脈の整合性、ユーザーインターフェイスの確認、文字化けにいたるまで、あらゆる角度から検証を行います。製品のクオリティを左右する重要な作業と言えます。

そこで問題になるのが、ハードウェアリソースの確保です。エンタープライズ向けのソフトウェアは、一般的なワープロや表計算とは比較にならないほど巨大で複雑な構造をしています。複数のテスターが、同時にかつストレス無くチェックを行うには、デスクトップPCではなく高スペックのサーバが必要になります。さらに最近では、1つのソフトウェアで数台を連携させるものもあり、ハードルはますます高くなっています。社内では仮想サーバ群を構築して対応を続けてきましたが、機材の陳腐化や障害時の対応、リソースの割り振りなど、解決すべき問題は少なくありませんでした。

これらの問題を解決したのが、IaaS(Infrastructure as a Service)です。ベンダーが仮想化されたインフラ(サーバなど)を提供し、ユーザーはインターネット経由で利用します。いわゆるクラウドコンピューティングの一種です。

具体的には「Amazon EC2(Elastic Compute Cloud)」を導入しています。必要なスペックのサーバを僅かな時間で用意でき(複数も可能)、必要な期間だけ運用し、検証の終了とともにシャットダウンすることができます。また、料金が完全従量制という点も評価できます。

前置きが長くなりましたが、このIaaS分野にHewlett-Packardが「HP Cloud Compute」として参入すると発表がありました。オープンソースの「OpenStack」を採用し、ベンダーの囲い込みを排除したのが特色です。今のところベータサービスとなっており、Amazon EC2などの競合サービスには及ばない部分もありますが、本番に向けて機能強化が図られるようです。

論より証拠ということで、早速ベータ版のユーザ登録をしてみました。無料で試用できるとのことだったのですが、利用者枠が一杯のようで「利用可能になるまでしばしお待ちを」ということでした。ちょっと残念です。いずれレポートをご紹介出来ればと思っています。

HP Cloud Compute(hp.com)