船出(開始)を示唆するが、分野によって表現がさまざま。マーケット関連では、製品やサービスを市場投入する場合にローンチという表現がよく使われるが、”投入””立ち上げ””発売””取り扱い開始””サービス開始”などといった表現もある。金融(証券)分野では、有価証券の発行を市場に発表することやファンドの立ち上げを意味する場合にローンチを用いる。因みに、翻訳プロジェクトを開始するときの表現として、ローンチはあまり使わない。皆さんご存じのとおり、”キックオフ”と言う。さあ、始めよう!というミーティングがキックオフミーティングとなる。終了後のミーティングは、評価、反省、今後のフォローも検討するという意味でフォローアップミーティングと呼ばれる。

Provisioning(プロビジョニング)
この用語の示唆する内容が広がってきたため、提供、供給、準備といった一般的な意味ではカバーしきれなくなっている。ITの分野では用語の意味する内容が進化しているため、プロビジョニングとカタカナ表記しないと文脈が混乱することになる。
サーバーを例に説明すると、例えばサーバープロビジョニングとは、サーバーを運用可能な状態にすることを指す。つまり、サーバー群からサーバーを選び出し、OSやアプリケーションソフト、デバイスなどをロードし、IPアドレスなどのシステム設定を行う一連の準備作業を示唆する。これがさらに進化して、CPU、メモリ、ストレージなどのコンピューティングリソースを動的に(静的な確保だけでは効率的な処理ができないので動的に必要なリソースを確保して)割り当てることも意味するようになってきた。
ちょっと難しい説明になってしまったが、ユーザー自身がリソースを用意しておかなくても、ニーズに応じてシステムリソースを直ちに用意してあげるようなサービスは、まさにこのプロビジョニングの発想だと考えれば理解できるだろうか。最近は、さらにアカウントやID情報などのライフサイクル(生成~失効)を管理する機能を指す場合も出てきている。そういった意味で、進化系用語なのだ。
Five nine(ファイブナイン、稼動率99.999%)
Five nineで思い出したが、その昔、1980年だったか『Nine to Five(9時から5時まで)』という映画があった。今は、ミュージカル化されて公演されているようだ。確か『Morning Train』という曲とも何か係りがあったように記憶しているのだが忘れてしまった。稼働率100%を目指して朝から働きづめというわけではないが、その映画と”Five nine”は全然関係はない。ファイブナインは、9が5つという意味。可用性を数値化した稼働率が99.999%ということ。年間の停止時間がたった5分15秒のようだが、やがては完全に100%というシステムも現れるのだろうか。訳す場合は、元原稿次第だが、five nineがフレーズのように強調され複数回出てくるようであれば、ファイブナイン(稼働率99.999)と説明してから使用するか、文脈のリズムによってはその逆の表記でもいいだろう。単にfive nineと単発で使用されていたら、”稼動率99.999%”と訳した方が読者にはわかりやすい。