Corporate governance(コーポレートガバナンス)

企業統治と訳される場合もあるが、カタカナ表記を推奨する。統治とは、主権者がまとめおさめることを意味するが、ここで言うガバナンスとは”監視”のニュアンスが近い。企業の健全性や透明性、法規定の遵守性などを確保するには、さまざまな機能が適切に組み合されなければならない。経営者の姿勢(意識)のチェック、マネジメントレベルの管理や監督、的確な内部統制、内部監査や外部監査などにより、違法行為や理念から離れた行動などを阻止できなければならない。ガバナンスでは、適切な情報開示やステークホルダーへのアカウンタビリティ(説明責任)が求められる。経営陣、管理者層の責任の明確化もなされなければならない。そこで議論になるのが、「会社(企業)は誰のものか」という問いだろうが、誰のもの(誰が主権者)かと論じるより、健全性、透明性、遵守性を確保することへの意識を徹底することがガバナンスに繋がる。

Stakeholder(ステークホルダー)

利害関係者と訳す場合もあるが、カタカナ表記が浸透してきている。企業の利害関係者と言う場合、その範囲をどう定義するかで解釈が分かれたりする。表記はともかくも、直接、間接を問わず利害関係者を指すのだろうが、”利害”とは何か、”間接的な関係者の範囲”をどう定義するのかは難しい。難しいと言えば、あるドキュメントに、”コーポレートガバナンスの視点からすると、企業との利害関係や依存関係がない外部からのモニタリングが重要で、モニタリングを行う人たちは利害関係者であってはならない”とあった。しかし、その後に”ステークホルダーとの連携で…”ともあった。連携しながらモニタリングすれば間接的ながらも関係していることにはならないか。どう翻訳すれば論理がつながるのか。翻訳者がそこまで考える必要があるのか、と思う部分もあるが、ドキュメントの筆者が言わんとしていることが理解できるだけに、そこは翻訳者としての”腕”の見せどころ…でもある。

Forensic(フォレンジック)

簡単に言えば、デジタルデータの法的証拠性を明らかにすること。その手法や技術によるビジネスも生まれている。さてさて、これもピタッとはまる(見てすぐわかる)日本語訳がない。フォレンシックと言う場合もあるが、フォレンジックの方が浸透している。一般にはまったく馴染みのない用語だが、民事訴訟では電子情報開示が義務付けられているだけに、フォレンジックが万全かどうか企業にとっては極めてクリティカルな課題だ。要求されるデジタルデータを洗いざらいすべて、いかなる漏れも許されず遅延なく提出しなければならない。提出漏れがあるだけでも厳しい制裁が課せられる。破壊や消去されたファイルの復元、改ざんやねつ造の検証、ログファイルの解析や不正アクセスがあった場合の追跡などによって証拠となり得るあらゆるデータが押収されることになる。従って企業は、日ごろからデジタルデータの管理や保全には、あらゆるフェーズで万全を期しておかなければならない。デジタル社会では、フォレンジックがますます重要視されてくるだろう。