高速デジタル回路測定に関する翻訳に、skew(スキュー)という言葉がよく出てくる(例えば、FPGAのデザインに適したI/Oアーキテクチャの選択)。
skewの一般的な意味は、「斜め」とか「歪み」であるが、高速デジタル回路の分野では、バス(ハードウェアの各要素がデジタルデータをやりとりするための経路。例えば、メモリコントローラとメモリ間のメモリバスなど)上の個々の信号線間の配線遅延に起因するタイミングのずれ(伝達時間の差)のことである。特にクロック同期式デジタル回路で設計されたLSIでは、すべての同期式順序回路(フリップフロップ)に同じタイミングでクロックを供給する必要があり、クロック回路から分配されたこれらのクロック信号間の遅延時間差はクロック・スキューと呼ばれる。
近年、バスは、データ転送の高速化により、複数の信号線を用いるパラレルバスから1対の差動信号線を用いるシリアルバスに移行してきているが、メモリモジュール内のバスやメモリやCPU内部のバスでは、複数のビットを同じタイミングで処理する必要があるので、パラレル転送が必要である。例えば最新のGPUでは、メモリバス幅が256ビットのものがあり、ピン数が非常に多く、配線遅延をなくすためにGPUのピンとメモリのピン間を等長で接続するのは非常に困難になる。したがって、PCのマザーボードのようにメモリモジュールを用いるのではなく、GPUを囲むようにメモリチップが直接配置されている。それでも、それぞれのピン間を接続するためには信号線を曲げる必要があるので(それぞれのピン間の信号線の距離が同じにならないので)、等長にするためにミアンダライン(蛇行した配線)が用いられたり、配線長を補正するためのトレーニング(電源投入時に遅延を予め測定して調整すること)が用いられている。
高速デジタル信号のタイミングのずれの問題については以下を参照。