traceable(トレーサブル)

測定器の測定確度に関する翻訳でtraceable(トレーサブル)という言葉がよく出てくる(例えば、PCBインピーダンステストの測定確度と相関の向上のp3)。

traceableを直訳すると「追跡可能」である。最近の消費者の安全志向、本物志向の高まりにより、食品のトレーサビリティ(食品が生産者から消費者に届くまでに、どうのような加工、流通経路を辿ったかを追跡可能であること)という言葉をよく耳にする。

トレーサビリティという言葉は、旧ソ連が人工衛星を世界で始めて打ち上げたときの驚き(スプートニックショック)に端を発した、米国の宇宙開発計画がその始まりとされている。ロケット開発では測定データの信頼性が不可欠なので、すべての測定器は当時の国立標準局(National Bureau of Standards(NBS)、現在はNational Institute of Standards and Technology(NIST))にトレーサーブルであるべきとされた。

測定器では、その測定値が標準の値(国家計量標準)にトレーサブルでないと、測定値の信頼性がなくなり、商品の製造、取引などに重大な影響を与える。したがって、日本では計量法に基づき、国家計量標準が定められ、国家計量標準につながる校正経路が確保されている。

測定器のトレーサビリティは、JIS Z8103:2000 計測用語に「不確かさがすべて表記された切れ目のない比較の連鎖(上の「国家計量標準につながる校正経路」)によって,決められた基準に結びつけられ得る測定結果又は標準の値の性質。基準は通常,国家標準又は国際標準である。」と定義されている。

トレーサビリティについては、以下を参照。

経済産業省のホームページ > 政策について > 政策一覧 > 経済産業 > 計量行政 > 計量標準 > 計量標準FAQ

Bode Plot(ボード線図)、Nyquist Plot(ナイキスト線図)

回路シミュレーションに関する翻訳に、ボード線図(Bode Plot)ナイキスト線図(Nyquist Plot)という言葉がよく出てくる(例えば、GoldenGate RFICソリューションのp4)

ある系(伝達システム、伝達回路)が、線形性(重ね合わせの原理が成り立つ)、時不変性(時刻が異なっても入力と出力の関係が同じ)、因果律(系の出力は、過去の入力のみに依存)を満たすとすると、インパルスδ(t)[t=0のときにδ(0)=1、t≠0のときにδ(t)=0となる関数]をこの系に入力したときの出力(インパルス応答、h(t))を測定すれば、この系に任意の時間領域の信号x(t)を入力したときの出力y(t)は、畳み込み積分を用いて、

y(t)=h(t)*x(t)=∫h(τ)x(t-τ)dτ、*は畳み込み積分の記号

と表される。

上の式の両辺をフーリエ変換すると(フーリエ変換の畳み込み定理から)、x(t)のフーリエ変換をX(ω)、y(t)のフーリエ変換をY(ω)として、

Y(ω)=H(ω)X(ω)

となる。ここで、H(ω)はインパルス応答(h(t))のフーリエ変換であり、系の伝達関数と呼ばれる。

H(ω)の大きさ|H(ω)|を周波数ωに対してプロットしたものはゲイン(利得)特性と呼ばれる。

H(ω)の実数成分Re(H(ω))と虚数成分Im(H(ω))で決まる偏角を∠θ(ω)とすると、

∠θ(ω)=tan^(-1)(Im(H(ω))/Re(H(ω)))

と表され、これを周波数ωに対してプロットしたものは位相特性と呼ばれる。

H(ω)の大きさ|H(ω)|と偏角∠θ(ω)を、それぞれ周波数ωに対してプロットしたものがボード線図である。

また、伝達関数H(ω)を、複素平面上で周波数ωを変化させながらプロットしたものはナイキスト線図と呼ばれる。

ボード線図については、以下を参照。

電子回路設計の基礎 – わかりやすい!入門サイト > 第3章 制御工学 入門 6.周波数特性とボード線図

via(ビア)

高周波プリント基板のシミュレーションに関する翻訳に、via(ビア)という言葉がよく出てくる(例えば、Advanced Design System(ADS) W2360EP/ET SIProシグナルインテグリティー電磁界解析 W2359EP/ET PIProパワーインテグリティー電磁界解析のp3)。

プリント基板(Printed Circuit Boardを略してPCBとも呼ばれる)とは、IC、トランジスタ、抵抗、コンデンサなどの電子部品を固定して配線するための基板であり、携帯電話の内部やPCの内部のマザーボードとしてよく目にする。

プリント基板には、基板の片方の面内にのみ配線パターンがある片面基板(1層基板)、基板の表と裏の両面に配線パターンがある両面基板(2層基板)、基板を複数重ねた多層基板がある。ICのピン数が多くなると、1つの平面内で配線することが難しくなるので(ICのピンから出ている多数の配線を同一面内でショートさせずに配線を交差させるには、基板の裏面に配線を通したり、絶縁体で隔てられた別の層に配線を通したりする必要があるので)、PCのマザーボードなどでは、6層基板や8層基板が使われている。

ビアとは、配線をショートさせずに交差させるために、基板の表と裏をつないだり、多層基板の各層をつなぐために開けた穴のこと(基板の裏や別の層を経由してつなぐという意味でviaと呼ばれる)で、導通させるために穴の内側は銅などでめっきされている。すべての層を貫通した接続用の穴はスルー・ビア・ホール(through via hole)、目的の層と層の間だけを貫通した穴はインタースティシャル・ビア・ホール(interstitial via hole)と呼ばれている。