LTSSM(リンク・トレーニング・ステータス・ステート・マシン)

PCI ExpressやUSB3.0の測定に関する翻訳に、LTSSMという言葉がよく出てくる(例えば、アドイン・カードまたはマザーボードでPCI Express 3.0 CEM仕様に基づいたレシーバ・テストに合格する方法のp22)。

LTSSMは、Link Training Status State Machine(リンク・トレーニング・ステータス・ステート・マシン)の略で、PCI ExpressやUSB3.0などのシリアル通信バスのリンク・ステート(通常の通信状態、省電力状態など)の管理(初期化、トレーニングによるリンク速度などの調整/最適化、省電力状態から通常状態への復帰など)を行うための状態遷移(ステート・マシーン)を表したものである。

PCI Expressでは、「Detect」(電源オン時やウォーム・リセット時に通信相手がいるかどうかを調べるステート)、「Polling」(通信相手が見つかった後の調整用データを通信するステート)、「Configuration」(通信相手とのリンク構成を決めるステート)、「L0」(通常の通信状態)、「L0s」(省電力状態)、「L1」(省電力状態)、「L2」(省電力状態)、「Recovery」(リンクの再トレーニングを行うステート)、「Hot-Reset 」(ホット・リセットがかかっている状態)、「Disable」(リンク構成を行わないステート)、「Loopback」(試験モードのステート)のステートがある。

USB3.0も、PCI Expressと同様のステートがある。

PCI ExpressのLTSSMについては、以下を参照。

LTSSMの各ステート

USB3.0ののLTSSMについては、以下を参照。

Design and Verification of USB 3.0 Link Layer(LTSSM)(英語PDF)

けやきひろば秋のビール祭り2014

keyaki2014autumn先週末あたりから、さいたまスーパーアリーナの方角に強いエネルギーを感じることがあり、原因を調査すべく現地へと赴きました。

さいたま新都心駅からアリーナへと人の流れに乗って進むと「けやきひろば秋のビール祭り2014」が開催されているではありませんか。エネルギーの発信源はこれだったのです! 原因が判明した以上、こうなったら楽しむしかありません。

毎回同じようなことを書いていますが、本当に回を追うごとにイベントのスケールがアップしています。我々調査団は開場30分前に到着しましたが、危うく席の確保ができないかと思うほどの大入りでした。

めぐり会ったビールは、定番ものからちょっと珍しい限定ビールまで、何杯飲んだでしょうか。ここにその一杯一杯をご紹介したいのですが、それはまた別の機会にいたしましょう。

ということで、次回は春。会場でお会いしましょう。

Allan variance(アラン分散)

周波数安定度測定に関する翻訳で、Allan variance(アラン分散)という言葉がよく出てくる(例えば、周波数カウンタを使用した搬送波信号近傍の位相雑音の測定のp2)。

周波数安定度(周波数変動)の測定手法には、周波数領域で短期周波数安定度を位相雑音(搬送波信号からの特定の周波数オフセットにおける、1 Hz帯域幅当たりの単側波帯パワー)として測定する手法と、時間領域でアラン分散という統計量(周波数のばらつき(変動)の指標)を求めて比較的長い時間の周波数安定度を表す手法がある。Allan(アラン)は、この手法を開発した人の名前である。

時間領域の周波数測定では、周波数カウンタが用いられ、瞬時周波数y(t)ではなく、ゲート時間τで平均化された周波数である

y_k_averaged=(1/τ)∫y(t)dt、積分区間はt_k~t_k+τ

が測定される。

τ秒平均周波数をT秒間隔でN回測定して得られるy_k_averaged(k=1~N)の分散(不偏分散)s^2は、

s^2=(1/(N-1))Σ(y_n_averaged - (1/N)Σy_k_averaged)、最初のΣはn=1~N、2番目のΣはk=1~N

である。この式では、各サンプルy_n_averagedと、測定された全サンプルy_k_averaged(k=1~N)の平均値(1/N)Σy_k_averagedとの差の和を計算するので、測定サンプルに長期的なドリフト(直線的な位相のドリフト、一定の周波数オフセット)が含まれている場合は、発散して値が決まらない。

この問題を解決するために、Allanによって、周波数安定度の時間領域の指標として、以下の式で表される分散が定義された。

σ^2_y(N、T、τ)=<(1/(N-1))Σ(y_n_averaged - (1/N)Σy_k_averaged)>、<x>はxのアンサンブル(標本)平均

この式では、有限の測定時間NTでのN個のサンプルの分散(N標本分散)の期待値(アンサンブル平均)を計算することにより、長期的なドリフトによる発散を避けている。特に、N=2、T=τの場合がアラン分散(2サンプル分散、二標本分散とも呼ばれる)であり、

σ^2_y(τ)=<(y_i+1_averaged - y_i_averaged)^2/2>

となる。アラン分散は、連続する2つの測定(サンプル)値の差の2乗和の計算なので、長期的なドリフトが含まれていても発散しない。

アラン分散については、以下を参照

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時間・周波数標準特集 > 2-2 時間・周波数標準の基本的尺度

時空標準特集 > 2-1 時間周波数標準の計測と評価の基礎