CQI、PMI、RI

LTEに関する翻訳で、CQI、PMI、RIという言葉がよく出てくる(例えば、LTE-Advancedの概要のp19)。CQI、PMI、RIは、それぞれChannel Quality Indicator(チャネル品質指標)、Precoding Matrix Indicator(プリコード化マトリクス指標)、Rank Indicator(ランク指標)の略である。

LTEでは、複数のアンテナを使用して周波数効率とデータ・レートを向上させるMIMOが使用されている。MIMOでは、基地局側の複数のアンテナの振幅、位相を調整して、アンテナ・ビームを端末に向けて最適な伝送を行うために、基地局からCSI(Channel State Information)参照信号を端末に送信する。端末は、この参照信号を用いてチャネル品質を測定してCSIレポートとして基地局に送信する。このCSIレポートにチャネル品質情報(CQI、PMI、RI)が含まれいて、基地局はこれらの情報を用いてアンテナ・ビームを合成する。

CQI、PMI、RIについては、以下を参照
LTE-AdvancedにおけるMIMOおよびセル間協調送受信技術
MIMO system, multiple antennasの「19. Uplink Control Signaling (Reporting the channel condition),チャネル状態通知」

thermocouple(熱電対)

計測に関する翻訳で、thermocouple(熱電対)という言葉が出てくる。熱電対は温度計測によく使用されるが、高周波のパワー測定に用いられるパワー・センサにも熱電対を使用するものがある。

熱電対とは、種類の異なる2つの金属線の両端を接合したものである。1本の金属線の両端に温度差を与えると、高温側の自由電子は低温側よりも大きなエネルギーを持つので、自由電子が高温側から低温側に移動する。その移動速度は金属の種類によって異なる。そこで、自由電子の移動速度が遅い金属線と速い金属線の両端を接合して熱電対を形成すると、自由電子の移動速度の差により電位差が生じ電流が流れ続ける。種類の異なる2つの金属線の組み合わせが決まれば、この電位差と温度差の関係が一意に決まる。この関係を利用して温度計測を行う。

熱電対の動作原理については、以下を参照
熱電対についての豆知識2
パワー・センサに用いられる熱電対については、以下を参照
パワー測定の基礎のp5-15~p5-17

尊敬する先生

先日、わたしの最も尊敬する先生から手紙が届いた。奥様の死を知らせる訃報であった。手書きの訃報にはこうあった。

「…自分のやりたいことばかりして、妻のしたいこと、また健康を思いやることに欠けていた私としては深い後悔に今はうちひしがれています。これからは妻の生き方、妻が私にしてくれたこと、妻が今後やろうとしていた社会貢献をよく考え、妻を生かし続けるよう努力したいと考えています。…」

その先生は、東京大学の名誉教授である。が、学者である前に活動家であり実践者である。”学者であると同時に”と言わないのは、実践者としての偉大さが際立っているからである。まさに、並はずれた頭脳を人生をかけて実践に生かされている。未曾有の苦難にあえぐ人々を救うための活動を実践されておられる。故にわたしは、その先生を最も尊敬している。

その先生を支えてこられ、最も強力な理解者であった奥様が亡くなられた。癌との闘いだったようだ。病床にありながらも、苦しみながらも明るく振舞っていたと聞いた。その奥様の病床でのお気持ちを察するには、余り有るものがある。深い愛が垣間見えるだけに、先生の実践者としての必死なまでの日ごろの言動に心打たれる一人として、奥様の無念さも伝わってくるようで辛く悲しみに耐えない。

いつの時代にも美辞麗句を並べるだけの人と”生きる”リスクを負う実践者はいる。実践者には時として、喩えて言えば「石」が投げ付けられたりもする。実践者には矢面に立つ覚悟と揺るぎない強い信念、そしてそれを可能ならしめる環境が必要なのだが、その環境を作り上げ支えておられた奥様には、先生と同等に尊敬の念を強く抱く。

時間は、実践者とそうでない人とをふるいにかける。時間が、歴史が、いずれ、正当にその先生の評価をしてくれるだろう。先生とともに活動に参加させていただいているわたしの切なる願いは、先生の生あるうちに、実践の”実り”を知らせる”吉報”が届くことである。たとえ、時間が実践者を評価する時が来るとしても。

週末、葬儀式に参列した。遺影写真の奥様は、明るく微笑んでいた。帰りの電車の中で、参列者への返礼文を開いてみた。そこには、奥様への想いがつづられていた。「笑顔の愛らしく美しい人」と題されて。

心から合掌||