NFC

無線通信測定に関する翻訳で、NFCという言葉がよく出てくる(例えば、Keysight E6640A EXMワイヤレス・テスト・セットのp3)。NFCは、Near Field Communication(近距離無線通信)の略である。

NFCは、13.56MHzの周波数帯の電波を利用して、10cm程度の至近距離で通信を行なう近距離無線通信である。JR東日本のSuicaや電子マネーEdyなどに採用されているソニーの開発した非接触ICカード技術(FeiCa)と、欧米の交通系カード、電子マネーなどに採用されているフィリップス社(現NXP Semiconductors)が開発したMIFAREという非接触ICカード技術を元にして、2003年12月にISO/IEC 18092として国際標準規格として制定された。ISO/IEC 18092(NFC IP(Interface Protocol)-1)には、MIFARE(ISO/IEC 14443 Type A)とFeiCaが含まれていたが、その後、ISO/IEC 14443 Type B(住民基本台帳カードや運転免許証に採用されている)とICタグの規格(ISO/IEC 15693)を加えたISO/IEC 21481(NFC IP-2)が2005年1月に制定された。

NFCには、カードエミュレーション機能(クレジットカードや電子決済カードのエミュレーションを行なう機能)、Peer-to-Peer(P2P)機能(端末同士がデータの送受信を行って認証やデータ交換を行なう機能)、リーダ/ライタ機能(NFCタグが内蔵された機器や商品からその情報を読み書きする機能)が規定されている。

NFCの測定については、以下を参照。

株式会社トッパンTDKレーベルのホームページ > NFCってナニ?

HARQ

デジタル無線通信測定に関する翻訳に、HARQという言葉がよく出てくる(例えば、LTE/LTE-Advanced FDD/TDD用Signal Studioのp1)。HARQは、Hybrid ARQ(Automatic Repeat reQuest)の略で、「ハイブリット自動再送要求」と訳されることもある。

デジタル信号伝送システムでは、ノイズや外乱によりデジタル信号に誤りが生じやすいので誤り訂正方式の導入が不可欠である(音楽CDにも読み取りエラー訂正用の誤り訂正方式(リードソロモン符号の付加)が導入されていることはよく知られている)。デジタル無線通信は、ケーブルではなく電波を用いて空間を伝送路として使用するので、信号強度が弱く、他の電波との干渉やノイズの影響を受けやく、デジタル信号に誤りが発生しやすい。

このようにデジタル信号に誤りが生じた場合に、それを訂正して元に戻す誤り訂正方式として、FFC(Forward Error Correction、前方誤り訂正)方式とARQ(Automatic Repeat reQuest、自動再送要求)方式がある。

FFC(前方誤り訂正)方式は、送信データに誤り訂正用の情報を付加して送り、受信側でその情報に基づいて誤りの検出/訂正を行なう方式である。FFC方式は、ブロック符号方式と畳み込み符号方式に分けられる。ブロック符号方式は、送信データをブロックに分けて、各ブロックに誤り検出/訂正用符号を付加して、各ブロック毎に誤りを訂正する。畳み込み符号方式は、連続する情報ビットの過去の数ビットを用いて現時点の符号化(誤り検出/訂正用)ビットを連続して得る(各符号化ビットが先行するいくつかの情報ビットの畳み込みで生成される)方式である。FFC方式はデータの再送を行わないのでスループットを一定のレベルに維持できるが、予想外の誤りに対処できない。

ARQ(自動再送要求)方式は、送信データに誤りが検出されたときに受信側が再送要求を行なう方式である。FFC方式に比べて、誤りの検出用のみの符号の付加でよいため冗長度が小さく、高い信頼性が得られるが、戻り回線とバッファが必要になるのでスループットが落ちる。

HARQ方式は、FFC方式とARQW方式を組み合わせたもので、FFC方式による誤り訂正が失敗した場合に、受信側はそのデータを保存しておき、送信側は送るべきデータの一部のみを再送し、受信側は保存したデータと再送された一部のデータを組み合わせてデータの訂正を試みる。さらに、データの訂正に失敗すると、送信側はデータの別の一部を送り、データが正しく訂正されるまでこのプロセスが続く。このようにして、データ再送によるスループットの低下を緩和する方式がHARQ方式である。

HARQについては、以下を参照。

Hybrid ARQ

誤り訂正方式については、以下を参照。

第3章 誤り訂正符号理論

Bluetooth Low Energy (BLE)

微小電流測定に関する翻訳に、Bluetooth Low Energyという言葉が出てくる(例えば、Bluetooth Low Energyデバイスの正確な電流プロファイル測定)。

Bluetoothは、バージョン1.x、2.x、3.x、4.xと着実に進化してきている。バージョン3.0までは主にデータ転送レートの向上がバージョンアップの目的であったが、バージョン4.0で、大幅な省電力化を実現できる低消費電力モードが追加された。これが、Bluetooth Low Energy (BLE)である。あらゆるものがインターネットにつながるIoT(Internet of Things)の有力な通信手段として、ZigBeeWi-SUNWi-Fi(802.11ah)などとともに注目されている。Bluetooth Low Energy (BLE)は、従来のBluetoothとは互換性がないので、デュアルモードにより従来のBluetooth接続にも対応した機器はBluetooth SMART READYとロゴ表記され、Bluetooth Low Energy (BLE)のみに対応した機器にはBluetooth SMARTとロゴ表記される。

Bluetooth Low Energy (BLE)は、通信を始める際に最初に必要なデバイス検出のためのスキャン対象のチャネル数が従来の79チャネルすべてから3チャネルに減少したことによるスキャン時間の削減、干渉軽減や秘話性のための周波数ホッピングの間隔が従来より長くなったことによる消費電力の削減、通信チャネル数が79チャネル(1 MHz間隔)から40チャネル(2 MHz間隔)に削減されたことによる高周波回路の簡素化による低電力化などにより、低消費電力が実現されていて、コイン電池1個で約3年の寿命があると言われている。

Bluetooth Low Energy (BLE)については、以下を参照。

IoT技術の代表「BLE:Bluetooth Low Energy」の動作原理を理解してみよう【前編】

スマホとコンビを組み始めたBluetooth Low Energyの低消費電力を支える技術 ―― 送信受信時のピーク消費電力を,既存品の3割以上削減!